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暫くすると、マイキーの顔が離れて、後頭部に回されていた手も自然と離され解放される。
だが逃げられないようにか、掴んだままの私の右腕は離さず、マイキーはただじっと私の瞳を見つめてきた。
光すら呑み込んでしまいそうな黒瞳と、私の瞳がかち合う。彼の瞳は一切揺らぐこともなく、真っ直ぐにこちらを見つめている。そのまま取り入って飲み込まれてしまいそうなほどに。
私はその様子にどう返したらいいかわからなくて、困ったように笑うしかなかったのだ。
「あはは、……ファーストキス、取られちゃったね」
「……っ」
明るく努めた筈なのに、マイキーは何故か苦しそうに顔を曇らせた。
「マイキー……？」
どうしたの、と聞こうとして顔を覗き込もうとすると、彼は今度はゆっくりと私を優しく抱きしめてきた。
「A……ごめんな……っ」
どこへも行かないように、けどとても優しい手つきで私を抱きしめるマイキー。彼の胸に押しつけられた私は、ぼんやりと今までのことを思い出していた。
出会ってからこれまで、後悔ばかりなのに後悔なんて感じていないような満足感ばかりで満たされている。矛盾ばかりだ。
「何で謝ってるの」
ふふっ、と苦笑すると、マイキーはさらに腕に力を込めた。けど腕の中の私が苦しくない程度のようで、まるで硝子細工でも触るみたいに繊細な手だ。
やっぱり、マイキーの体温は不思議と落ち着く。
ゆるりと腕がはずされて、マイキーは心を落ち着かせるように淡く息を吐いた。
またザワザワと木々が揺らぎ始めて、まるでマイキーの吐息で時が動き始めたみたいだった。
「どうしたの、マイキー。今日は何か変だね」
「……オレ、何もしてやれなくてごめんな」
「私はマイキーから色んなものをもらったよ」
「……そうじゃねえんだよ」
呟きは、木々のざわめきに攫われて虚空へと消えていく。
私は俯いたままのマイキーを励ますかのように、立ち上がって、階段の二段下へ降りると、マイキーの前に立って、手を差し出した。
「さ、帰ろう。帰りも迷子にならないよう引っ張ってくれるんでしょう？」
「……うん」
マイキーは私の顔を見上げて、笑顔とも、哀愁ともとれる表情をして、私の手を取って立ち上がった。
段々、段々と、狂っていく。
秒針が、歯車が、逆向きに回るように。
より苦しめることになったのだと、結局最期までわからなかったのかもしれない。
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ぱーぷる姫(プロフ) - 純粋に狂った愛でした。ボロボロ泣きました。本当にありがとうございました。 (2023年1月27日 7時) (
レス) id: be661beda4 (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - めっちゃ良かった！涙が止まらなくて久々に号泣しちゃいました。素敵な作品を読めて嬉しかったです☆ (2022年3月8日 14時) (レス) @page49 id: e10675e39d (このIDを非表示/違反報告)
梅累(プロフ) - りゃんさん» ありがとうございます……！嬉しいです。読んで頂き感謝です！！ (2021年11月7日 20時) (レス) id: 62e7d56914 (このIDを非表示/違反報告)
りゃん(プロフ) - 素敵です…… (2021年11月7日 18時) (レス) @page50 id: 9dca799aaf (このIDを非表示/違反報告)
梅累(プロフ) - ミイさん» コメントありがとうございます。この作品が誰かの心に届いたと思うととても光栄です。まだまだ至らぬ部分もありますが、これからも応援よろしくお願いします。 (2021年9月2日 17時) (レス) id: 62e7d56914 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：梅累 | 作成日時：2021年8月31日 12時
