死ぬまで一緒にいようね ページ48
–––––––––––––
『数年前のあの事件ですか？』
通話口から橘直人の声がこだまする。
「マイキー君に関係あることかもしれない！ お願いだ、教えてくれナオト」
『……ちょっと待っててください』
本来なら警察の内部情報を一般人に教えることなどあってはならないのだが、彼の場合は特殊らしい。
特殊も何も、時を超えて未来を変える能力があるのなら情報を明かすのもやぶさかではないのかもしれない。
『ありました。被害者は––––––』
暫くして通話口に戻り、淡々と事件の概要を話し出す直人。武道は生唾を飲み込む思いで聞き入っていた。
『財産が盗まれた痕跡はないようですが、被害者宅からは……被害者の娘のものと思われる遺骨だけが紛失していたそうです』
––––––––––––––––––
マイキーへ
ひとりにしてごめんね。
あいしています。
そんな言葉が、如何にも死に間際の弱々しい文字で綴られていた。そんな文字を見れば、嫌でも彼女が体を動かしづらくなった頃に懸命に書いたものなのだろうと思わされた。
たった二言。
その二言だけでも、佐野万次郎という人間を狂わせ、縛り付けるのには充分すぎる言葉だった。
–––––––––––––––––––
あいつの父親を殺した。
あいつを渡してくれなかったから。
殺すつもりはなかった。
でも、仕方なかったんだ、全部。
オマエに会うためなら、オレは何だってやるから。
「……首領、そろそろ時間です」
口元の傷が特徴的な男が、彼に声をかけた。
彼は虚ろな目でゆっくりと顔を起こすと、大切そうに抱えていた重厚で小さな箱を仕舞って立ち上がった。
「……やっと逢えるな、A」
ぽつりと吐息のように溢した言葉は、背筋が凍るような得体の知れない気味の悪さに包まれていて。
無表情であるのに、恍惚とした感情を露わにするという器用で不気味な真似をしてのける。もう光がさすことなどない瞳に、かつて愛だったものがその形を変えて差し込んでいく。
「死ぬまで一緒にいような」
乾いた声で呟いて
左の薬指に輝く指輪に
口付けを落とした。
〈終〉
あとがきと解説→←The story of those left behind
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ぱーぷる姫(プロフ) - 純粋に狂った愛でした。ボロボロ泣きました。本当にありがとうございました。 (2023年1月27日 7時) (
レス) id: be661beda4 (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - めっちゃ良かった！涙が止まらなくて久々に号泣しちゃいました。素敵な作品を読めて嬉しかったです☆ (2022年3月8日 14時) (レス) @page49 id: e10675e39d (このIDを非表示/違反報告)
梅累(プロフ) - りゃんさん» ありがとうございます……！嬉しいです。読んで頂き感謝です！！ (2021年11月7日 20時) (レス) id: 62e7d56914 (このIDを非表示/違反報告)
りゃん(プロフ) - 素敵です…… (2021年11月7日 18時) (レス) @page50 id: 9dca799aaf (このIDを非表示/違反報告)
梅累(プロフ) - ミイさん» コメントありがとうございます。この作品が誰かの心に届いたと思うととても光栄です。まだまだ至らぬ部分もありますが、これからも応援よろしくお願いします。 (2021年9月2日 17時) (レス) id: 62e7d56914 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：梅累 | 作成日時：2021年8月31日 12時
