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マイキーが未来で闇落ちしてしまうとしたら、原因は何なのだろう。
 確かに他の悪い人たちに唆されたりはあったと思うんだけど、もっと決定的な何かがあった筈なんだ。

 タケミっちには、私のできる範囲……といっても相談に乗るくらいなんだけど、手伝うと言っておいた。
 まさかタイムリープなんて、そんな非現実的なことが本当に起こるなんて信じられなかったけど、タケミっちの話にはどこか信用に足るものがあった。

 私も死んだらタイムリープしないかなーなんて夢のようなことをぼんやりと考えて、天井の電気を何となく見つめる。
 
 
「……って、Aさん、聞いてる?」


 そうしていたら横から声がかかって、私ははっと意識を引き戻された。

 隣で花瓶の花を替えていたエマちゃんが、私を心配そうに覗き込んでくる。


「ご、ごめん、ぼーっとしてた」

「体調悪くなってない? キツかったら言ってね」

「うん、ありがとう。大丈夫だよ」


 エマちゃんもよくお見舞いに来てくれて、色んなお話をしてくれる。

 私の見てないマイキーの姿だって、殆どエマちゃんから聞いたものだし、他にも巷で流行りのファッションやスイーツだとか、ヒナちゃんというお友達の話とか。

 同年代の女の子との会話はとても楽しくて、私も少しだけど学校に行って友達とお喋りをしているような、そんな感覚になれた。


 窓辺に佇むエマちゃんは、とても綺麗でどことなくマイキーみたいな面影があって、異母といってもやっぱり兄妹なんだなと思ってしまう。
 
 きっとマイキーにとってもエマちゃんは大切な存在なんだろう。


「エマちゃん……エマちゃんは絶対長生きしてね」

「急に何ー?」

「なんか、何となく、そう思って」

「変なのーっ」

 
 カラコロと鈴が鳴いたように笑うエマちゃんに、私はどことなく安堵してほっと息をついた。
 エマちゃんなら大丈夫そうだ。

 ひょっとしたらマイキーが未来で闇落ちしてしまったのは、エマちゃんを失ったからかと思ったが、今のところ彼女に危害が加わるようなことはない。
 でも、マイキーに付け込もうとする悪い奴らが、総長の妹だからという理由でエマちゃんを狙ってくる、という可能性がどうにも捨てきれない。


「エマちゃん、最近物騒だから気をつけてね」

「今日のAさん、何か変ー」


 クスクスと笑ったエマちゃんのすぐ後ろまで、死神は迫ってきているのだということを、私はこの時まだ知らなかった。

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ぱーぷる姫(プロフ) - 純粋に狂った愛でした。ボロボロ泣きました。本当にありがとうございました。 (2023年1月27日 7時) (レス) id: be661beda4 (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - めっちゃ良かった!涙が止まらなくて久々に号泣しちゃいました。素敵な作品を読めて嬉しかったです☆ (2022年3月8日 14時) (レス) @page49 id: e10675e39d (このIDを非表示/違反報告)
梅累(プロフ) - りゃんさん» ありがとうございます……!嬉しいです。読んで頂き感謝です!! (2021年11月7日 20時) (レス) id: 62e7d56914 (このIDを非表示/違反報告)
りゃん(プロフ) - 素敵です…… (2021年11月7日 18時) (レス) @page50 id: 9dca799aaf (このIDを非表示/違反報告)
梅累(プロフ) - ミイさん» コメントありがとうございます。この作品が誰かの心に届いたと思うととても光栄です。まだまだ至らぬ部分もありますが、これからも応援よろしくお願いします。 (2021年9月2日 17時) (レス) id: 62e7d56914 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:梅累 | 作成日時:2021年8月31日 12時

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