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「あけましておめでとう、A」
「おめでとう、父さん」
1月1日。私は無事新年を迎えることができて、父と一緒に新年を祝っていた。
お年玉……は貰っても使うことができないし、おせちも今の私には食べられるものが限られるので却下なため、こうして二人で祝いの言葉を投げかけるだけにとどまる。
「あと寿命2ヶ月切っちゃったな……。桜でも見られたら良かったんだけどなー」
「じゃあ春まで頑張って生きよう」
「そうだね」
私だって、いくら希望がないとはいえ完全に諦めた訳ではない。私なりに生きようと頑張っているのだ。
残された一分一秒を大事にしながら。
父さんは私の前では元気に振る舞っているが、前と比べて少し痩せた気がする。
そりゃあ実の娘があと数ヶ月で死ぬなんて事実は、普通なら正気じゃいられないのだろう。治療費のためにと、余計なことを考えないように必死に働いているのか、隠しているつもりらしいが滲み出る疲れは隠しきれていなかった。
けど父さんはとっくに正気なんかじゃなかった。
私が手術を受けないと伝えた時も、止めることはなかった。
普通なら、医師が言うように、僅かでも希望にかけさせようと思うのだろう。
だけど父はいつだって私のことを尊重して、どうせ死ぬならという私のしたいことを優先してくれた。
私の前ではいつも笑顔で、不安になんかさせなくて。その笑顔の裏には多大な苦しみと葛藤を背負っているというのに。……マイキー達の前では元気を装う私も、その血を引いているななんて感じた。
父は……母が死んでから死という現象に異常なまでの対応と客観性ができるようになっていた。
娘が死ぬというのに決して取り乱すことはなく、私がより幸せだと感じて死ねるように、全てを肯定して協力してくれている。
「……父さん、私、父さんを置いていって死んじゃうの、ごめんね」
「何を謝ることがあるんだ。父さんのことは心配しなくていいから。Aは充分、父さんを幸せにしてくれたよ」
「……ごめんなさい、一人にしてごめんなさい」
「Aは頑張ってるじゃないか。だからもうそんな顔しないで」
優しい笑顔をうかべる父。
いつも夜帰ってきては、私にバレないように泣いてたよね。
「ありがとう、父さん」
親不孝な私を許して。
妻も娘も失くすのは、とても辛いだろうけど。
先立つ不幸をお許しください、ってこういう時に使うのかな。
なんて、ぼんやりと考えてみたりした。
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ぱーぷる姫(プロフ) - 純粋に狂った愛でした。ボロボロ泣きました。本当にありがとうございました。 (2023年1月27日 7時) (
レス) id: be661beda4 (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - めっちゃ良かった！涙が止まらなくて久々に号泣しちゃいました。素敵な作品を読めて嬉しかったです☆ (2022年3月8日 14時) (レス) @page49 id: e10675e39d (このIDを非表示/違反報告)
梅累(プロフ) - りゃんさん» ありがとうございます……！嬉しいです。読んで頂き感謝です！！ (2021年11月7日 20時) (レス) id: 62e7d56914 (このIDを非表示/違反報告)
りゃん(プロフ) - 素敵です…… (2021年11月7日 18時) (レス) @page50 id: 9dca799aaf (このIDを非表示/違反報告)
梅累(プロフ) - ミイさん» コメントありがとうございます。この作品が誰かの心に届いたと思うととても光栄です。まだまだ至らぬ部分もありますが、これからも応援よろしくお願いします。 (2021年9月2日 17時) (レス) id: 62e7d56914 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：梅累 | 作成日時：2021年8月31日 12時
