It's not a big deal to die. ページ23
「オレ……は……っ」
「マイキー。……大丈夫」
茫然と力が抜けたように座り込んでいたオレを、ヨロヨロと立ち上がったAが優しく抱きしめてくれた。
落ち着くまで抱きしめられても、オレは自責の念に押しつぶされそうになっていた。
「……ごめん、本当に、ごめん……っ」
今まで溜め込んできた涙が押し寄せてきた。
Aがどうしても死ぬと意識せずにはいられなかった時からの、苦しみと、悔しさと、よくわからない感情が混じった、オレの醜い涙が頬を伝って流れていく。
そのまま全部、オレの穢れた感情さえも、涙と一緒に流れ出してくれればいいのに。
オレは抱きしめ返す資格を先程の愚かな行いで失ったから、ただ彼女の肩口を涙で濡らすしかなかった。
「ごめん……ごめん……っ」
謝っても許されないことをしたのはわかってる。
なのにAは怒ることなく黙ってオレを優しく抱きしめ続けた。
「……私も、死にたくないよ」
落ち着いたのを感じたからか、Aはオレから身を離すと、前にしゃがんでオレの頬を撫でた。
申し訳なさからか、Aと視線を合わすことはできなかったが、それでも構わず彼女は独り言のように呟いた。
「でも、終わりは必ずくるもの。私はそれが人よりちょっと早かっただけ」
オレの頬に触れていた手が、その熱を残して離れていく。今はそんな体温すらもすぐに失せて頬に残らない。
「……じゃあせめて、死ぬまでオレとずっと一緒にいて」
縋るような、最後の願いだった。
掠れた声で吐き出したその言葉を、Aは丁寧に受け止めて、暫く逡巡したような間をおいてから、彼女は口元に笑みを刻んだ。
「……そんなこと言われたら一人にさせられないじゃん」
そう言って、彼女は困ったような顔をして笑うと、不意にその身を乗り出してオレの唇に自信のそれを押し付けた。
ぎこちなくて、不器用で、それでいて優しい口付けだった。
「……自分からするの、難しいね」
呆気に取られて彼女を見るオレをよそに、Aははにかんだ笑みをうかべた。
ふと落とした視線の途中で目に入った、その細い首にくっきりとつけられた痣だけが、赤黒く遺っていた。
––––––あの瞬間、彼女はオレに殺されて良いと笑った。
その光景がフラッシュバックして、彼女の狂気を垣間見たような感覚がして、オレはその時初めて、Aに恐怖を感じた。
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ぱーぷる姫(プロフ) - 純粋に狂った愛でした。ボロボロ泣きました。本当にありがとうございました。 (2023年1月27日 7時) (レス) id: be661beda4 (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - めっちゃ良かった!涙が止まらなくて久々に号泣しちゃいました。素敵な作品を読めて嬉しかったです☆ (2022年3月8日 14時) (レス) @page49 id: e10675e39d (このIDを非表示/違反報告)
梅累(プロフ) - りゃんさん» ありがとうございます……!嬉しいです。読んで頂き感謝です!! (2021年11月7日 20時) (レス) id: 62e7d56914 (このIDを非表示/違反報告)
りゃん(プロフ) - 素敵です…… (2021年11月7日 18時) (レス) @page50 id: 9dca799aaf (このIDを非表示/違反報告)
梅累(プロフ) - ミイさん» コメントありがとうございます。この作品が誰かの心に届いたと思うととても光栄です。まだまだ至らぬ部分もありますが、これからも応援よろしくお願いします。 (2021年9月2日 17時) (レス) id: 62e7d56914 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梅累 | 作成日時:2021年8月31日 12時