memento mori ページ20
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『ずっと友達でいてね』なんて。そんな事、できる筈がない。
それは、彼女が死んでも友達でいるという意味なのか。彼女の人生が終わるまでのずっとなのか。
そのどちらなのかはわからないが、ただ一つ、自分がわかることとすれば、どうしようもなく、自分は彼女を失いたくないという気持ちだけだった。
自分では何もできないのに。確実に近づく死の足音を待つだけなのに。
Aとケンチンを先に帰らせた後、オレは病院の通路の裏で一人しゃがみ込んでいた。
使われていない通路なのか、かろうじてついている蛍光灯が時折チカチカと点滅して消えかかり、それが何だかあいつの命みたいに思えた。
『私と心中して』
あの時、彼女はこう言った。嘘に紛れた……嘘に頼って見え隠れする、ほんの少しの本心。
そんなことで幸せになれるなら、オレは喜んでAと心中したかった。
失いたくなくて、毎日毎日、どうにもならない自分と現実に嫌気がさして頭が痛くなる。
どうやってもAAは死ぬ。
もしもオレが過去に戻れて、全てをやり直せたとしても、絶対に彼女は救えない。
それを受け入れたくないのに、現実はいつでもついて回る。
Aはその結末を受け入れているのか、オレ達と会う度に、その一つ一つ、一日一日を慈しむような笑みをうかべるのだ。
「……こんな所で、何してるの？」
ふと、頭上からあの愛おしい声が降りかかって顔を上げると、こちらを心配そうに覗き込むAの姿があった。
「ケンチンが探してたよ」
そんなことを言いながらも、ケンチンに報告しに行く訳でも、オレを連れて行く訳でもなく、彼女はよっこらせと呟きながらオレの隣に同じようにちょこんと座りこんだ。
チカチカとしていた蛍光灯が、じんわりとその光を取り戻していく。無機質だが暖かい光が、隅々まで行き渡って、オレとAの姿をうき上がらせた。
「もう12月だねー」
しんと冷えた廊下に彼女の声がこだまして、耳朶を打った。
Aはニットの上着の袖についた毛玉をじっと見つめながら、無心で毟っている。
ほら、今もそうやってオレが悩んだり考え事をしたりするのを黙って尊重して促してくれるんだ。
その優しさが、オレには痛いんだよ。
……オマエさえいれば、オレは何にでもなれる気がするんだ。
折角見つけた、一筋の光だったんだ。
ne vivam si abis.→←− 1910：20：14
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ぱーぷる姫(プロフ) - 純粋に狂った愛でした。ボロボロ泣きました。本当にありがとうございました。 (2023年1月27日 7時) (
レス) id: be661beda4 (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - めっちゃ良かった！涙が止まらなくて久々に号泣しちゃいました。素敵な作品を読めて嬉しかったです☆ (2022年3月8日 14時) (レス) @page49 id: e10675e39d (このIDを非表示/違反報告)
梅累(プロフ) - りゃんさん» ありがとうございます……！嬉しいです。読んで頂き感謝です！！ (2021年11月7日 20時) (レス) id: 62e7d56914 (このIDを非表示/違反報告)
りゃん(プロフ) - 素敵です…… (2021年11月7日 18時) (レス) @page50 id: 9dca799aaf (このIDを非表示/違反報告)
梅累(プロフ) - ミイさん» コメントありがとうございます。この作品が誰かの心に届いたと思うととても光栄です。まだまだ至らぬ部分もありますが、これからも応援よろしくお願いします。 (2021年9月2日 17時) (レス) id: 62e7d56914 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：梅累 | 作成日時：2021年8月31日 12時
