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マイキーは私の言葉に目を大きく見開いて、どこか哀しげな表情を覗かせた。
「……なんてね。冗談だよ」
力なく笑って、私は大人しく病室へ戻ろうと歩き出そうとした時だった。
顔を上げてマイキーの方を見ると、澄んだように真剣な顔をして、私を見つめていた。
「マイキー?」
「……いいよ」
「……え?」
「心中、してやってもいいよ」
先程までと違って少しだけ縮まった距離を、マイキーが足早にこちらへ歩いてきて更に距離を詰める。
「オマエがそうやって命を投げ出すのなら、オレも一緒に死んでやるよ」
どんどんと距離を詰めてきて、
「オレも一緒に地獄に連れてってよ」
ついには私の目の前に来て、じっと視線を落とす。
その瞳は真剣で、今の言葉に何の嘘偽りもないことを示しているようで、私は彼の見せるその側面に冷や汗が滲んだ。
「ごめん……嘘。死なないから」
バツが悪くなって顔を伏せると、マイキーはまたいつもの優しい顔になって、柔らかな手つきで私の頭を撫でた。
「オマエが辛いのはわかってる。けどな、……二度とそんなこと言うなよ」
「うん。……ごめん」
何となく、ほんの一刻魔がさして放った言葉だけれど、マイキーはそれを正面から受け止めて正してくれた。
けど、マイキーは私と一緒に死んでくれるのか。
それは正しい事なのだろうか。どこか狂気を帯びているような、歪んでいるような感覚に、私は急所をなぞられたような違和感と危機感のようなものを感じずにはいられなかった。
「あ、あとオレも言わなきゃならねえことがあったんだよな」
「何?」
「神社の時さ、オマエあれファーストキスっつったじゃん。あれ、違う」
「……え」
予想だにもしなかった言葉に、私は思わず間の抜けた声を出してしまった。マイキーはその反応を面白さそうに見やって、時折見せる悪戯が成功した子供みたいな笑みを見せた。
「オレ、オマエが寝てる間に一回したから。あれ二回目だな」
「勝手に何してんの……」
「ん。それだけ。さ、戻るぞ」
何でもないように私の手を取って、マイキーは先を歩いていく。
お互い好きなんて言葉を言い合うことは決してないだろうけど、言葉にしないだけで心ではわかっている。
恋人以上で、恋人未満という、矛盾した関係。
この関係に名前をつけるのはやめておこう。
そうしてしまえば、また自責の念に駆られてしまって、私でなくなるような感じがするから。
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ぱーぷる姫(プロフ) - 純粋に狂った愛でした。ボロボロ泣きました。本当にありがとうございました。 (2023年1月27日 7時) (レス) id: be661beda4 (このIDを非表示/違反報告)
青龍 葵(プロフ) - めっちゃ良かった!涙が止まらなくて久々に号泣しちゃいました。素敵な作品を読めて嬉しかったです☆ (2022年3月8日 14時) (レス) @page49 id: e10675e39d (このIDを非表示/違反報告)
梅累(プロフ) - りゃんさん» ありがとうございます……!嬉しいです。読んで頂き感謝です!! (2021年11月7日 20時) (レス) id: 62e7d56914 (このIDを非表示/違反報告)
りゃん(プロフ) - 素敵です…… (2021年11月7日 18時) (レス) @page50 id: 9dca799aaf (このIDを非表示/違反報告)
梅累(プロフ) - ミイさん» コメントありがとうございます。この作品が誰かの心に届いたと思うととても光栄です。まだまだ至らぬ部分もありますが、これからも応援よろしくお願いします。 (2021年9月2日 17時) (レス) id: 62e7d56914 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梅累 | 作成日時:2021年8月31日 12時