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夢の中での邂逅 ページ47

耳に届いた優しい声に、体をびくっと揺らして顔を上げる。

ここは…夢の中じゃ…。

「だ…誰……ですか?」

目に入ったのは長い黒髪に歴史に出てくるような着物姿の美しい女性。

あれ…この人…どこかで……。

とても美しい女性なのに、何故か初めて会ったような気がしない。

「何か悲しいことでもあったのですか?」

そう優しく問いかけられて、知らない人のはずなのにどうしてだか答えるのに抵抗感がなかった。

「あ…いえ……少し、昔のことを思い出してしまって…。もう亡くなってしまった人なんですけど…」

Aの言葉を聞いた女性は驚いたように目を丸くした。

その反応に、Aは不思議そうに首を傾げる。

「あの……?」

「いえ、何でもありません」

女性の眼差しは、どこか愛おしいものでも見つめるかのように優しくて。

私、この人に会ったことはないはずなのに。どうして、こんなに懐かしい気持ちになるんだろう…。

「もう、会えなくなってしまった父に…何にも持ってない私を大切にしてくれる祖父に…今も京妖怪達と闘っている兄に…。こんな私を受け入れてくれる組のみんなに……私だけ一人、何もできないっ……」

自分の不甲斐なさを認めてそれを口に出すのはとても勇気がいる。

それも、初めて会った目の前の人に話すのは。

それなのに、女性は優しく微笑んで聞いてくれている。

「みんなは、あなたのことを役立たずだと言いましたか?」

責め立てる口調ではなく、Aの言葉を穏やかに待っていてくれる。

だからか、ついつい話してしまう。

一緒にいると、不思議と落ち着いた気持ちになり安心させてくれる。

「…いえ。みんなは、優しいので……」

大きな瞳から止まったはずの涙が再び溢れ出す。

「怖いんです…。優しいみんなに甘え続けることが、いつか私のせいでそんなみんなを傷つけてしまうんじゃないかって….みんなを危険に晒すことが……っ」

現に今も。

これから前に進み続けていくリクオや奴良組のみんなを、強くなる兄を。

俯いて胸元で握りしめる拳が震える。

頭にそっと置かれた手にハッとして顔を上げる。

いつの間にか近くに来ていた女性が優しく微笑んでいる。

微かに香る桜の香り。

桜……。あれ、桜って確か……。

頭に過るのは祖父の部屋に置かれた仏壇。

その仏壇に彫られた桜の花弁。

もしかして、この人ー。

目を見開くAにそっと微笑むと、優しくその髪に触れる。

それは、目の前の女性と同じ艶やかな黒髪。

桜の木の下で→←父への謝罪



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作者名:エッグタルト | 作成日時:2024年3月7日 1時

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