壊される百鬼夜行 ページ4
パキパキと凍りつくキセル。
「なんだこいつ…氷の妖怪だったのか。ひっついて取れねえな」
「てめぇえええぇー」
激昂して土蜘蛛の元へ向かうイタクだったが、土蜘蛛に振り払わられる。
「出しゃ張んな。オレが選ぶまで待ってろ。次はそこの…おめーだ…」
そう言って指を指したかと思うと、その先にいた妖怪を殴りつける。
次から次へと妖怪を殴りつけていく土蜘蛛に息を呑むゆら。
そんなゆらに対し、十三代目は冷静に竜二へと指示を出す。
「竜二…作戦変更や。祢々切丸を回収する」
「なッ…」
勢いよく振り向くゆらとは対照的に、竜二は険しい顔のまま何も言わない。
「な…何言うとんねん！？」
「最悪な状況はさける。竜二頼むで、ゆらは逃げろ」
「でも…でも！！」
十三代目の言っていることは正しい。
羽衣狐を倒すためには破軍の使えるゆらとそして祢々切丸が必要だ。
例えここでリクオ達奴良組がやられてしまっても祢々切丸だけは守らなければならない。
ゆらと祢々切丸、その二つが壊されてしまうことは何としてでも避けなければならないのだ。
理解はできても納得はできないゆら。
「次はおめーだ、おんな」
土蜘蛛が指差したのは雪女。
「リクオ様のカタキ……風声鶴麗」
目に涙を浮かべながら攻撃を放った雪女のそれにより伸ばした腕が凍りつく土蜘蛛。
「な…何…？」
ザッという音に気づいた竜二が目にしたのは、先程までリクオが倒れていた場所にある畏の羽織。
血だらけのまま立ち尽くすリクオの胸元に、傷だらけの雪女が飛ばされてくる。
「あ…リクオ様だぁ……よかったぁ……生きてらっしゃったのですね……」
フラフラになりながらもリクオの姿を見て、目に涙を浮かべ弱々しく微笑む。
「よかった…本当に…これで…また…守れ…ます…」
そのままズルズルと崩れ落ちていく雪女の姿に戦慄する。
黙って見ているしかできなかったAは、よろけながらもそんな二人の元に駆け寄った。
「てめぇぇは、んだ…まだ生きてやがったのかああ！？」
「……てめーが殺しそこねたんだろ…」
ゴプッと口から血を吐きながら土蜘蛛を睨みつける。
「こいつらは…オレの部下だ…オレの畏についてきたやつらなんだ…ボクが生きてるうちは…こいつらに手ェ出すんじゃねぇよ…」
そんな様子を見つめる淡島とイタク。
彼らの元に雲間から陽の光が差し込む。
「百鬼夜行壊すってんならオレを殺ってからにしろ、くそったれ」
雪女を抱きながらそう叫ぶ。
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作者名：エッグタルト | 作成日時：2024年3月7日 1時
