百鬼夜行の御業 ページ27
駆けつけた牛鬼は、リクオの姿に目を見開いて立ちすくむ。
リクオの背中には鴆のものと思われる羽が刻まれていた。
「リクオ、お前…」
「牛鬼、これが"業"か？」
ギロリと睨みつけてくるリクオに、ゾッとするような何かを感じる。
「おい、早くしなお前ら。こいつら解毒が必要だぜ。毒羽根か？どーなってんだよこりゃ」
自身の部下達に声をかけ、倒れた天狗達を手当てしようとする鴆。
そして、父の言葉を思い出す。
総大将のために力となれた。お前も百鬼夜行のために翼を広げるのだぞという言葉。
あれはこういうことだったのかと。
「そ…そんな…バカな…こんなはずは…なんと…鞍馬の精鋭たちが…」
駆けつけた鞍馬天狗は、倒れ伏す仲間達に驚き狼狽える。
「牛鬼…一体何をやったのだ…？何を…しこんだ？」
「……お前が知る必要はないことだ、天狗。これは奴良組の強みなのだ」
聞かれた牛鬼の答えをただじっと聞く鞍馬天狗。
「リクオ…お前の最初の盃の相手は鴆だ、きっとお前たちならつかむと思っていた」
その言葉に手を止めて黙って牛鬼を見つめる鴆。
「リクオ、今ならわかるな？お前は仲間を信じ、また信じられることで力を得るのだ。守るものでも守られるものでもない。それが百鬼の主の業へとつながるのだ」
刀を肩に担ぎ、じっと距離を詰めてくる牛鬼を見据える。
「そうか…オレは今まで何でもかんでも自分一人でやろうとしてたんだな…」
頭に過るのは、今までの戦いと奴良組の妖怪達の顔、姿。
そして、最愛の妹の顔。
自分が守ってやらなければならないとそうずっと思ってきたけれど。
鴆に聞いた言葉と、氷麗の傷を癒していたその姿を思い出す。
いつの間にか、彼女は自分一人の力で立ち上がり前に進もうとしている。
彼女がいなければ耐えられなくなってしまっていたのは自分の方。
妹を守ることが自分の使命であり、そして自分に守られる妹の存在に少なからずほっとしていた。
まだ、この手の中にいてくれるのだと。
ああ、早く妹の顔が見たい。
Aと話さなければ、一刻も早く。
そして、伝えたいことが山ほどある。
聞きたいことも、話して欲しいことも。
リクオの言葉を聞いて、眩しそうにその目を細める。
「牛鬼、すまねぇな。気付かせてくれて」
フッと笑みをこぼすと自身の刀を抜く。
「最後のしあげだリクオ…その業で私の畏を断ち切ってみろ」
畏を膨れ上がらせる牛鬼。
「牛鬼……」
リクオもジャキッと刀を構えた。
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作者名：エッグタルト | 作成日時：2024年3月7日 1時
