敗北の苦み2 ページ15
｢ま…
一日でも長く生き延びるよう努力するんだな
鈍間は鈍間なりに…
な｣
小次郎は出ていく前にAを見た
｢(幸平…
Aかー)｣
｢まったく〜
素直じゃないですね〜
ごべんなさい…｣
日向子が茶々入れし小次郎は力強く顔を掴まれ即座に謝った
｢…?
……え?
…あの…
えっと｣
｢田所くん｣
未だにどうなっているのか分からない恵に堂島が声をかけた
｢食べる者を温かくもてなそうという気概
『心遣い(ホスピタリティ)』
それが君の料理にはある!!
その強力な武器をこれからも遠月で大事に磨いてゆきたまえ
その3枚のコインは君らの未来に対する投資だー｣
『なんか…
助かったみたいだね
よかったね
恵っ』
ニッと笑いかけられた恵は目から涙が溢れその場に座り込み泣いている
｢こうなる事…
初めから見越していたのですかな?｣
｢む
…もちろん田所恵が不出来な品を出すようなら学園からお引き取り願ったさ｣
｢四宮の停滞は鋭すぎる才覚故…
ですか｣
｢ああ
四宮は上だけを見るあまり不必要と思うもの全て残さず削ぎ落としひたすら自分の料理のみを追求した…
(そして奴は高みへ到達してしまった
その類い稀なる才覚ゆえに圧倒的な速度でオーナー・シェフとして器が成熟する前にー)
料理人が高みを目指し続けるためには切り捨てるのではなく…
あらゆる所から吸収しようとする貪欲さこそ不可欠なのだ｣
今夜で四宮はそれを取り戻すだろう…!
｢この食戟で二人の料理人が同時に救われた…
堂島さんは教育者ですな｣
｢ふ…
買い被りだな｣
堂島と関守が話している頃Aは座り込んで泣いている恵の肩をポンと叩いた
Aと恵はホテルへ戻るため外に出たがもうすっかり暗くなっていた
『やーすっかり…
夜だね』
｢そうだね…｣
恵のポケットに入っていたスマホがヴヴヴとなっていた
｢？
メール…｣
恵はスマホを取り出した
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作者名：レンサ | 作成日時：2019年2月13日 0時
