敗北の苦み1 ページ14
小次郎が落としたコインは恵の皿に落ちコインが2枚となった
｢……｣
涙を拭いた小次郎はしばらくぼーとしていた
｢おい鈍間｣
｢は…
はいっ…!｣
｢パテに仕込んだ香辛料…
オールスパイスだな…?｣
オールスパイスとは
フトモモ科の熱帯植物
葉や未熟な果実を乾燥させたものを料理の香り付けに使用する
シナモン・グローブ・ナツメグなどの香りを全て併せ持つ事からその名で呼ばれるのである
｢食材の臭みを取るのに重宝する香辛料…
鶏レバーの臭み抜きに使ったみたいだね｣
｢あ…
えっと
……はい…｣
｢?｣
｢あ…勿論それもあるんですけど…
先輩達は昨日からずっと審査で沢山の料理を食べてますよね…
だから
えっと
オールスパイスには臭みを取る他に消化促進の効果があるから…
す…少しでもそのおなかに優しい品を出せたらと思って…｣
恵は戸惑いながらもはっきりと言った
ぶわっ
突然日向子の両目から勢いよく涙が出た
｢やっぱり…
恵ちゃんは最高です…!｣
｢ああ…
やはり僕達の見る目は正しかったようだね｣
｢好みのタイプだっただけでしょう…｣
鼻をかむ日向子に目尻を抑えているドナードに水原がツッコミを入れた
｢そんな事はないですよ水原先輩ー!｣
｢…………｣
｢拙くとも響く料理だったな｣
その様子を見ている小次郎に堂島が話しかけてきた
｢田所くんは勝負の場であっても料理を食べてくれる相手の事をしっかり見ようとした…
お前が頂の先へ道を拓くのに必要な事に思うが?｣
｢ちっ…
(堂島さんの手のひらの上だったってわけか…
そうかー
俺はもうずっと長い事
客の顔もスタッフの声も顧みずひとりっきりで料理をー)｣
その時
｢たあっ!｣
｢!?｣
ぺちっと音を鳴らしたのは日向子が持っていた500円玉が恵の皿の上に置かれた
｢はい…
これで同票
即ち引き分けですねっ
この勝負…
私が預からせてもらいますよ!｣
｢む
引き分けという事はつまり田所くんの処遇は食戟開始前のままという事だが…?｣
｢……
フー…
何から何までイレギュラー…
とんだ茶番だ｣
小次郎は恵を見た
｢あう…｣
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作者名：レンサ | 作成日時：2019年2月13日 0時
