【文豪ストレイドッグス】私は待っていた

第七話 ページ8

ーーーバンッ！！



中「ポートマフィアだ！
抵抗したらーーーあ？」


洋館の玄関に俺の間抜けな声だけが響いた。

…どういうことだ、一体何がどうなってやがる。


樋「これは…」


樋口が構えていた拳銃を下ろしながら、俺の顔を伺うようにして見た。

その表情にはハッキリと、戸惑いの色が見てとれた。


芥「…誰もいない？」

中「みてぇだな」


そう、洋館には人一人いなかった。

これだけの広さだ、家主が留守でも使用人の一人や二人は玄関にいるもんだと思っていたが…。

人影どころか気配すら感じない。


洋館の中は甘く、しかしたどこか酸っぱい香りで満ちていた。


樋「…どうしますか」

中「…」


俺は無言で中に入った。

後ろから後を追う部下たちの足音が聞こえる。


…俺は数歩歩いて、罠がないか辺りを見回した。


中「…このまま行く」

???「ダメ！」

全員「！？」


周りを見る。

…俺たち以外は誰もいない。

じゃあ何ださっきの声は？


???「今すぐ帰って！」

中「…おい、こりゃあどーゆうことだ
俺の幻聴か？仕事疲れか？」

樋「私にも聞こえるんですか…幻聴、なんですか？」


樋口や芥川、黒蜥蜴、他の部下たちも戸惑いの色を見せた。

俺だけじゃねぇみてーだな。

この少女の声が聞こえるのは。


中「…これが相手の異能力か？」

???「そんなことはどうでも良いでしょう！？
兎に角帰って！早く！」


相手に声は聞こえてるみてーだな。

俺はどこからか聞こえる…というより、頭の中で響く少女の声に聞いた。


中「何で帰んなきゃなんねぇんだ？」

???「急いで下さい！
でないと御主人様がそっちにーーあっ」

中「あ？」


突然、少女の声は聞こえなくなった。

部下たちの方を見れば、全員が首を傾げる。


???「ーーおやおや、どちら様かと思えば…
横浜の血生臭い狂犬ポートマフィアではありませんか」

全員「！？」

中「…誰だ」


少女の声に夢中で周りが見れていなかった。


コツコツ…と廊下の奥から一人の男が歩いてくる。

顔には不気味なほどに穏やかな笑顔。

身に付けている装飾品からして、大分裕福な地位の人間らしいことが分かる。

…だが、表の人間にしては油断ならない雰囲気だ。

裏社会の人間か…。


田「おやおや、これは失礼
私は田中と言います、ただの投資家ですよ」

中「そうかテメェが家主か」


俺は後ろの部下に手を上げて合図した。

チャキッと拳銃が構えられる音がする。


中「大人しく異能力者を渡せ」

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