【文豪ストレイドッグス】私は待っていた

第四十五話 ページ48

ーー貴女side



???「ーーっ！」


呼んでる、私の名前を。

呼び掛けてくれてる。



私はゆっくりと目を開けた。





全員「A！」




真っ先に飛び込んできたのは皆の心配気な顔。


皆だ、皆がいる。

その事に胸の奥が暖かくなるのを感じながら、私は混乱していた。



…一体何がどうなって…。


貴「…私…」


呆然と呟いた。

ゆっくりと起き上がってみる。

…あれ？あれ！？


ばっと頭に触れる。


傷がない。

確かにここを銃で撃ったはず。

この手で、この命に終止符を撃ったはず。


貴「まだ…生きてる…」

与「あぁ、生きてるよ」


ふと、私の隣に座っていた与謝野さんを見る。

安堵した表情に優しい眼差し。

…あ。もしかして。


与謝野さんの異能力は『君死給勿』


貴「与謝野さん…が？」

与「あぁそうさ
余計なお世話だったかい？」


ブンブンと頭を振る。

余計だったなんて、そんな。


貴「全然、そんなの…」

与「？」


言葉を切った私を、与謝野さんは不思議そうに見た。


…今なら言える。

うん。

言い慣れてないからちょっと恥ずかしいけど…

きっと素直に言える。

自分の口から、ちゃんと伝えられる。


私は首から下げたロケットに服越しに触れた。


お姉ちゃん。

私に少し、勇気をください。


貴「ーーあ、ありがとうございましたっ！」


その場で正座して、ガバッと頭を下げた。

頭を上げて言葉を続ける。


貴「とても、とっっても嬉しかったです！

邸に来てくださった時も
部屋に来てくれた時も
助け出そうとしてくれて

本当はすごく嬉しかったんです！」


視界が滲んだ。

あの時の感動を、込み上げた思いを、

流れてきた思い、扉が蹴破られる音ーー

全部を思い出して。

嬉しくて嬉しくてーー泣いてしまうくらい。



塞いだ私の居場所なんて、誰にもわからない。

誰も見つけてくれない。

そう思ってたから。


皆が部屋に来てくれたとき、

私を薄暗い部屋から見つけ出してくれたとき、


私の存在が確かなものになった気がして

生きてるって確かめられた気がして


嬉しかった。


すっごく。



貴「本当にーー本当にっ！
ありがとうございました！」


私は涙を隠すように、また頭を下げた。





太「Aちゃん」


優しい声と共にポンッと頭に手が乗せられた。


太宰さんの手は暖かくて大きくて

あぁ、安心する。



涙…止まんなくなるよ…。



太「ーーよく頑張ったね」

貴「っ！」


涙、止まんなくなった。

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