【文豪ストレイドッグス】私は待っていた

第二十三話 ページ25

ーー貴女side


タタタッ！

ぽふっと白が飛び付いてきた。

私はできるだけ優しく受け止める。

ジャラ、と鎖が音をたてた。


貴「白、お帰りなさい」

白『Aっただいま！』


頭の中を流れる白の言葉。

そう、私なら話せない白の言葉もわかる。

勿論白以外でも、心があるものならば全て。

会話がない会話ができる。

少し不思議だけど。


複数の人の足音が近づいてくるのが聞こえてくる。


私は目を合わせないよう、視線を下げた。

…こういう時、どうしたら良いんだろう？


貴「ーー白をここまで…すみません」


とりあえず思ったことを口にしてみた。

御主人様以外の方に会ったのは久しぶりだから、どうしたら良いのかわからない。

…う〜ん、わかるんだけど何というか…。


???「…君がAちゃんだね？」

貴「…」


黙ったままの私に、白は彼らを指差して言った。


白『皆良い人達なんだよ！
Aを助けるために来てくれたんだ！
優しいよ！…ちょっと怖いけど…』

貴「うん、よく知ってるよ」


知ってる、わかってるよ。

横浜に来てからずっと、聞いてたいから。

ただちょっと…不安になっただけ。


私は軽く頷いて言った。


貴「はい、そうです
私がAです」

???「やはりそうなのか！
私はーーー」

貴「太宰治、さんですよね」

太「！！」


私は相変わらず目を合わせないまま、笑みを深くした。


貴「他の方も存じております」


…あらら、皆黙ってしまった。

もっと話したいな。

………いやいやいや、ダメダメ！！

時間がない上に、私はここから…。


貴「…でもやっぱり、聞かせてください
皆さんの名前を」

太「え？」

貴「分からないと思うかもしれないですけど…
読むのと実際に聞くのとじゃ、気持ちが全然違うんです」


そんな私の我が儘で、唐突に自己紹介大会？が始まった。





、





、





、






、





貴「ーーわかりました
わざわざすみませんでした」

敦「ううん、全然構わないよ」


皆の自己紹介聞くの、楽しかったな。

へへ、またしたいなぁ。

…あ。

そっか…。


貴「…ここから出られないから、『また』は無いのか」

敦「っ！…どうして出られないの？」

貴「だって、これ見てわかりませんか？」


私は手や足を動かし、鎖をジャラジャラ言わせた。

首の枷は見たらわかるよね…。


貴「私に自由はありません
この枷が、鎖が、私を縛るから…」

芥「…『羅生門』」

敦「…」

貴「っ！ーーーえ？」

　

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