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「宮侑が二人なんて勘弁。」
人とこんな風に話したのは久しぶりで、意識していなくても口数が少なくなってしまう。嫌われないだろうかと心配になったが、そういえば相手は殺人鬼だった。
嫌われて何の問題があるんだ。
血さえこの世に存在しなければ、宮侑は極めて普通の人間だったのだろう。いや、違うな。関西弁のイケメン大学生だったのだろう。
夕食を食べ終わった後、宮侑は皿洗いを手伝ってくれた。お風呂の順番を聞くと、宮侑は「後ではいるから、Aちゃん先入ってや。」と言ってくれたので、先に入らせて貰う事にした。
お湯を張る為にお風呂を磨いていると、「まあ、間違えて覗いてまうかもしれへんけど。」と馬鹿げたことを言う宮侑には顔面に水シャワーをぶっかけておいた。
身の安全が確保された上で、ゆっくりと湯船に浸かろうとしたときにお腹の傷の事を思い出した。そういえば、私お風呂入れないじゃん。仕方なく、メイクだけ落として風呂場を出た。髪も洗いたいけど、明日にしよう。朝、シャワーを浴びてから大学に行ったからきっと大丈夫なはず。
脱衣所を出て、ソファでだらーーと寝転がっている宮侑に声をかけた。
「?えらい早いやん。」
「誰かさんにお腹のあたりをグサッと刺されたせいで、湯船に浸かれませんでした。」
「ぐっ……そんな怒らんくてもええやん。今度飴ちゃん買ったるから。な?」
「宮侑は大阪のおばちゃんなのかな。あ、着替えはお父さんのだけど新品だからこれ。」
「ありがたいわぁ。ほな、入らせてもらうな。」
そう言って、そそくさにこの場を立ち去るのである。怒られたくないなら、刺さなきゃいいのに。あーー、考えない考えない。愛着が湧くとハマってしまう。私が宮侑を好きになるという事はすなわち彼の思う壺なのである。
昔やっていたバラエティ番組で、アル中の夫から抜け出せない妻の実話を再現したVTRを見たことを思い出した。依存は怖い。殺人鬼の彼氏に依存なんてもっとヤバイじゃないか。テレビの中の可哀想な女が自分なんて笑えない。
宮侑は「好き」だの「ええ嫁さんになれる」だの言っているが、聞く耳を持っちゃ駄目だ。イケメンすぎる容姿に心を持って行かれそうになるが、断じてあってはいけない。いずれ、殺害されてしまう。
いっそ、防護服でも買った方がいいのか?甲冑……とか?いつ刺されても刃を通させない素材の……って、アホか。
死にたくないなら、早く追い出せばいい。
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水彩campus - めちゃくちゃ良い作品です!!!侑かっこよすぎ……(ニヤニヤ)更新頑張って下さい!!待ってます(*^^*) (2020年11月29日 3時) (レス) id: d614036431 (このIDを非表示/違反報告)
一(プロフ) - チャイさん» チャイさんありがとうございます。色気ムンムンの宮侑目指して今後も頑張ります……! (2018年11月26日 22時) (レス) id: ca6dbfc4b7 (このIDを非表示/違反報告)
チャイ(プロフ) - 色気に溢れた作品ですね……最高です (2018年11月25日 14時) (レス) id: 26170b8b11 (このIDを非表示/違反報告)
一(プロフ) - manaさん» manaさんありがとうございます!楽しんでいただけて何よりです!更新がんばりたいと思います……!! (2018年11月17日 17時) (レス) id: ca6dbfc4b7 (このIDを非表示/違反報告)
mana - とってもいい作品ですね!これからも応援してます!!!!!!!!!! (2018年11月16日 20時) (レス) id: a616d0f8f5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:一 | 作者ホームページ:https://twitter.com/ninoma_e
作成日時:2018年11月10日 17時