意識高い乙女のジレンマ ページ40
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倉「で？そっから音信不通？」
『まあ、そういうことになるな』
目の前で焼肉を頬張る大倉は、たいそう大きな溜息を漏らした。
倉「ほんで俺に仲介頼むってことか」
『ちーちゃんの事だけはどーにかせんとあかんし』
倉「ふぅん」
ごくごくと喉仏が上下して、黄金色のビールがどんどん消えていった。
仕事終わりの男の飲みっぷりに惚れ惚れする。
特にここ最近は、信ちゃんがお酒を飲むところを見られていなかったから。
倉「ていうかさあ、普通にちーちゃん預けたままってことは、どっかのタイミングで戻ってくるんちゃうん？」
『いや……どうやろ。たまに私が事務所顔出す日に、合鍵で入って可愛がったりはしてるみたいやけど』
多分、あれはきっと。仲直り出来るとかそういうレベルじゃない。
心の奥底から嫌われてしまっているような気がする。
大倉はまた「ふぅん」と相槌を打って、箸を伸ばした。
倉「まあええよ。何すればいいん」
『ちーちゃんとお世話グッズ、マネージャーに預けたいから、都合いい日聞いといて』
倉「代償は？」
『ここ奢り』
倉「乗った」
大倉の白い歯が光った。
それに安堵して、私もようやく肉に手をつける。
『どう？最近』
倉「どうもなにも、って感じ。あ、来年ドーム決まったで」
『お！おめでとう。そろそろ曲提供してみよかな』
倉「それよりさっさと信ちゃんと仲直りしたら？」
ズバリ、と切り込んできた彼の言葉を無視して、私は烏龍茶を飲んだ。
『どんなんがいい？最近、結構バラードばっか作ってたから、邦ロック調のもチャレンジしてみたいねん』
倉「俺はAのバラード好きやから、バラードがいい」
『えーどうしよ。でもバラードやと私が作ったってバレそうじゃない？』
倉「よっぽど好きな人くらいしか分からんのちゃう？信ちゃんとか」
探るような目が、私をジロジロ見つめる。
『じゃあまあバラード1曲と邦ロック1曲にするわ。最近作曲スピード上がってるから楽しみにしてて』
倉「信ちゃんと会わん分、仕事してんねんもんな」
『ちょっともうさっきからなんなん！』
とうとう私が吠えると、大倉は首を傾げた。
倉「理由言わんと言うこと聞いて貰えると思ったら大間違いやで」
『…………2軒目も奢るから』
倉「あ、ホンマに？ありがとぉ」
買収できたとほっとしたのも束の間。
倉「ほんで？なんで喧嘩したん？」
追求が止むことはなく、私は頭を抱えた。
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作者名：藻くずちゃん | 作成日時：2022年9月28日 16時
