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『中島ー。大丈夫？ちゃんとベッドで寝なよ』
結局、一番近くの私の家から回ってもらって、私は助手席から足を下ろす。
『はいコレ。タクシー代。中島の事よろしく』
立ち上がろうとしたその時、実は意外と酔っていたのかふらついてタクシーに手をついてしまった。
菊「うわ、大丈夫？」
『ビックリした……(笑) 』
菊「何笑ってんすか。ちょっと……え？歩けます？」
『歩け、る。多分』
一歩踏み出すも、グラグラと視界が揺れる。
さっきまで大丈夫だったのに、タクシーの車酔いも混ざって変な酔い方をしてしまっているらしい。
菊「いやさすがにやばいでしょ。Aちゃんがそんな酔ってんの初めて見たわ」
『ね。私も久々。こんな酔ったの』
最近はメンバーくらいとしか飲まないから、必然的に介抱役に回らなきゃいけなくて。自然とセーブしていた部分もあったんだろう。
それが菊池という安定感抜群の後輩相手ともなると、タガが外れたのかもしれない。
あと、話の内容もちょっとディープだったし。
菊「部屋まで送ります」
『おー、ありがと。さすがに頼むわ。ジャニーズ辞めた奴がマンションで行き倒れはさすがにネタにならん』
運転手に断って、私たちは中島を置いてマンションに向かう。
エレベーターの手すりにもたれている私を見て、菊池は「すみません」と謝った。
『なにが？』
菊「いや、そんな酔ってんの気づかなくて」
『菊池が謝ることちゃうて。菊池のこと酔わせようとした結果やから自業自得やわ』
支えてもらって部屋の前までどうにか辿り着く。菊池が居なかったら、やばかったかもしれない。
菊「ベッドまで行けます？」
『行けるんちゃう？』
菊「なんで他人事なんすか」
鍵を開ける私を見送って帰ろうとしていた菊池がまた戻ってきた。
菊「ベッド入ったの見たら帰ります」
『ふぃー、優しぃー』
菊「いいって、そういうの」
あれ。
肩を組んでふざけていた最中、ドアが開かなくて驚く。
鍵は確かに回したはずなのに、と訝しんでいると、内からガチャリとそれが開いた。
菊「あっ……え？」
村「よお」
菊池が本気で戸惑う声がした後、信ちゃんのいつも通りの低音が鼓膜を震わせる。
菊「…………失礼します」
『あっ、ちょっと待って！菊池、』
何故か信ちゃんの顔を見ないようにダッシュで逃げていった菊池。
取り残された私が振り向くと、そこには怖いくらいに顔を歪めた信ちゃんが立っていた。
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作者名：藻くずちゃん | 作成日時：2022年9月28日 16時
