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村「ソファー行くか？」
『いや、抱っこええから！自分で動けるから！』
伸ばされてくる手を振り払って、私はケンケンでソファーに移動した。
倒れ込むと、心配そうな顔をした信ちゃんがついてくる。
村「危ないなぁ」
『もう1人で生活出来てるくらいやから大丈夫やねんて』
啖呵を切って、私は翠と遊ぶ信ちゃんに指を突き立てた。
『あんな何も話さんとすぐ無理って言うたことは謝るよ！』
村「ええよそんなん」
『けどな！私と信ちゃんが付き合ったら、色々めんどいことなるやろ！』
村「グループ内恋愛禁止のことか？」
『そう！』
怪我で辞めた人間が、辞めてすぐメンバーと付き合い出したなんて知れたら、そんなのもう「え？付き合うために辞めたの？あんな大々的にお涙頂戴しといて？？」となるのは目に見えている。
私はもう一般人だからいいとしても、矢面に立つのは間違いなく信ちゃんなのだ。
『だから絶対に私が信ちゃんと付き合うこと無いから。もし仮にちょっとええなと思っても、ぜっっったいに付き合いはせんから！』
村「わかった。ほな付き合わんでもええわ。内縁の妻ってことで」
『いやもっと最悪やろ……』
ボケ倒すこの人が憎くて仕方がない。
私だって、大好きな信ちゃんの恋愛は実ってほしいに決まってる。
その相手が私じゃないのなら。
聞き分けの悪い彼を前に、私は本気で刺々しい声を発してしまった。
『ホンマにちゃんと考え直しって。今まで私以外にも付き合えてたんやから、他の子でもいけるってことやん』
この言葉を聞いた途端に信ちゃんの顔が歪む。
そして吐き捨てるように口を開いた。
村「お前と付き合われへんから適当に遊んでただけや。相手側もそんな感じやったし」
『ってことは、今までの子ら……全員、マトモな恋愛で付き合ってへんってこと？』
村「好きなヤツおるとか、色々と遊びたいとか理由はマチマチやったけどな。そもそも23年経って告白してきてんから、今更俺が気持ち変えられへんのくらい分かるやろ」
これは少し驚きだった。
信ちゃんの恋愛遍歴は、知っている限り物凄く数が少なかったし、よっぽど少数精鋭なんだろうと思っていたのに。
まさかその内の誰とも本気じゃなかったなんて。
村「俺かてな……グループ一緒やって分かった時だの、周年ライブだのん時に、何回もお前のこと諦めようとはしてんねん」
苦しげな声が胸を打つ。
空気を読んだのか、翠はどこかに行ってしまっていた。
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作者名：藻くずちゃん | 作成日時：2022年9月28日 16時
