・ ページ25
・
二「そういう大事なことは先に言ってよ」
相「ちゃんと相手とは話したの？」
『まあ』
櫻「絶対話せてないじゃん」
元お世話係2人と、Aちゃんの第2の父にとっては、彼女の先行きに口うるさくなるのも仕方の無いことなのかもしれない。
二「誰？この業界？」
『……まあ』
櫻「俳優？」
『……いいじゃん、そんなの』
最近Aちゃんとよく居るイメージのある男………
2、3人浮かぶけれど、どいつもこいつも一見、そんなことをするようには思えない。
相「良くないよ。だってAちゃんだけの子供じゃないんだよ？」
『でももう私だけの子ってことにしたの』
二「なんで」
『疎まれて育てられるくらいなら、私一人で愛してあげたい』
櫻「じゃあ結婚は？」
『しない……っていうか妊娠したって言ってから、連絡も途絶えた』
大「クズだな」
リーダーの言葉が刺々しくなるのも頷ける。たしかにクズだ、そんな奴。
『…………でも、私も同じことするから』
二「どういうこと？」
Aちゃんが何故か縮んだように見えた。
弱々しい頬笑みを浮かべて、彼女は両手をキツく組む。
『私も……ファンの子達を捨てるから』
そこでようやくこの集まりがどうして収集されたかを思い出した。
そうだった。Aちゃんは、事務所を辞めるって話をするために俺らを集めたんだった。
『被害者ヅラするつもりは無いの。何年も芸能界いるくせに、ちゃんと人を見る目が無かった私が悪いんだし』
しんと部屋が静まり返る。
開け放った窓の遠くから波の音が微かに聞こえてきた。
『でも、これしか無かった。事務所の人とも何回も話したけど、もうこのライブが終わってすぐ辞めるしかないの』
櫻「……さっきも言ってたけどさ」
翔くんが言葉を1つずつ掬いながらゆっくりと話す。
櫻「出産の時だけ活動休止して、その後はV6兄さんたちみたいに何事もなく仕事したらいいんじゃないの」
Aちゃんをどうにかここに留めようとする翔くんの意志に触発されて、俺も口を開く。
松「そうだよ。別に出産するって言わなくてもいい。とにかく休んで1年後にまた戻ってくればいいじゃん」
Aちゃんは首を振った。
『1年で踊れなくなるし歌えなくなる。1人で子供を育てながら、活動をする未来は私には見えない』
相「1人の子育てが不安なら、俺らも手伝うよ」
俺らが頷いてみせても、彼女は決して肯定しなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 203人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：藻くずちゃん | 作成日時：2021年12月30日 22時
