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side沖田
「俺が憎いなら動け。」
なぜあのとき言い返せなかったんだろう。
俺は確かに土方が憎いが、だからと言って、というかだからこそ、
あいつの意味のわからない言葉の通りには動けない。
のに、何かがずっと心の中に引っかかっている。
心を全部溶かしてしまいそうな何か。
とっつぁんとの話が終わって帰る途中に通ったうちの教室を覗くと、
一人で教卓に向かうA。
帰れなかった。
動けはしないと思う割に、動かないこともできない。
ちぐはぐだ。
『オメェ、まだいたのかィ。』
「え?」
紅い目がこちらに向く。
「日直日誌書いてた。」
『ふーん。』
「そっちは?」
『幹部の件でとっつぁんに呼び出し食らった。』
憎いなら___
土方の言う通りに動くのは癪だが、
どうしても、動かない、ができない。
もう、伝えてしまおうか。
「今、まっちゃんどこに……」
Aにまっすぐ向かい合う。
つながる視線。
伝えたい、が、この繋がりを断ちたくない。
動きたい、動きたくない。
「……まっちゃんどこにいる?」
まばたきをした。
『……体育教師用の教員室見てェなとこ。』
「ありがと。」
繋がっていた視線は簡単に切れて、
Aは足早に去ってしまう。
『はァ……』
このまま帰るか、待つか。
『どうしたもんかねィ。』
教団に登って、教室を眺めて見る。
1年前、この黒板で座席を確認して、隣に坂田って文字があった時、
俺は、喜んでいたっけ。
隣に座るやつが、こんなに愛しいとは思わなかった。
なんとなく筆箱に目をやって、
___目を、見開いた。
途端に走り出す。
やってきた道を引き返す。
あいつは結局、俺がやったマフラーは一度もしなかった。
けど、でも。
視線を合わせることもめっきり減った。
部活の行き帰りに交わす言葉も減った。
なのに___
第二教員室、と書かれた扉の前で、上がった息を整える。
とっつぁんや、他の先公がいるかもとか、そんなことは考えなかった。
ゆっくり、扉を引く。
目の前には、桜。
少し暗い教員室の中で、ベランダに繋がるガラスの引き戸が開いていて、
明るい光と桜が目一杯差し込んでくる、中に、
Aがいる。
「沖___」
『___テメェに惚れてる。』
振り返ったAの目が見開かれる。
「は……」
『テメェが俺のことを嫌ってようとどうしようもねェ。観念しろ。』
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とと - 最高でした!言葉に表せないくらいです。お疲れ様でした。番外編期待しちゃっていいですか? (2020年11月8日 1時) (レス) id: 204f45673b (このIDを非表示/違反報告)
ニコ(プロフ) - チノちゃんさん» ずっと待っていてくださったなんて、ありがとうございます、お待たせしてしまいましたね、、あと少しの間の更新も、よろしくお願いします! (2020年9月12日 10時) (レス) id: 03670ff2ec (このIDを非表示/違反報告)
ニコ(プロフ) - サクラさん» せっかくのコメントに直ぐにお返事出来ずすみません(*_*)ありがとうございます、励みになります、、!! (2020年9月12日 10時) (レス) id: 03670ff2ec (このIDを非表示/違反報告)
チノちゃん(プロフ) - きゃぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁあついについに(泣)長かったここまで来るのにずっとずっと楽しみにしてましたァ(´TωT`)もう好きですぅぅぅ (2020年9月12日 8時) (レス) id: 5e7e485832 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - ずっと楽しみに読ませてもらってます!この作品大好きで更新楽しみにしてます! (2020年9月11日 20時) (レス) id: 319352fe0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ニコ | 作成日時:2020年9月3日 3時