訊けないよ 〜雅紀side ページ25
Aちゃんとの約束の日
今日もちょっぴり遅れちゃってオレは猛ダッシュ
ニノに聞いた店、確かこの辺に…
あっ、あった。
店内に入ると、すぐに奥に案内される
ニノが店長さんに言っておいてくれたらしく
小さいけど、プライバシーばっちりの部屋なんだって
「あ、ありがとうございます」と店員さんに頭を下げ
扉を開けると…ソファにちょこんと座るAちゃんの姿
つーかさ。
この部屋、雰囲気、よすぎない？
暗い照明の狭めの部屋
黒い革張りの二人がけソファが一個だけ置いてあって
てか、「雰囲気いい」を通りこして
下心丸見え風じゃない？
もーニノさ。
そーいうことは、先言って！
なんかオレ、へんな汗出てきたわ
さりげない感じでソファまで近づき、Aちゃんの隣に座る
雅：「ごめんね、Aちゃん。お待たせ」
A：「いえ、全然！
あの……すごいお部屋だね」
いやっ、ニノがねっ…
そう言い訳しかけて、いや、待てよと。
雅：「Aちゃんと、二人きりになりたくて、さ。
……まずかったかな？」
A：「いえ、まずくないです」
隣のオレの顔を見てふふっと笑うAちゃん
そっと手がオレの顔に近づき…
A：「ふふ、汗。走ってきたの？」
冷たいおしぼりがおでこに当てられる
ミントの香りが鼻腔をくすぐって
ビールで乾杯をして食事を頼む
ニノの言うとおり、部屋の雰囲気のせいかな
Aちゃんもだんだん打ち解けて
ほら、オレの話聞いて楽しそうに笑ってる
でもさ。
この笑顔見ちゃうとさ、逆に訊けなくない？
「オレのことどう思う？」とか
「オレと付き合ってくれる？」とか
だってさ。もしだめだったらさ。
もう、この笑顔に会えないんだよ？
突然Aちゃんがオレの肩をぽんぽんと叩く
雅：「ん？」
A：「相葉さん、携帯、鳴ってる」
テーブルの上で光る携帯を見つめ…えっ
ニノ？
.
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