「君は悪くない」7

341.変化（ミン・ハミン） ページ44

・



 N͜͡umberが解散して二年以上経った今、AちゃんがN͜͡umberの本当の解散理由を告白したこと。それ自体は何にも悪くない。しばらくは事務所の周りが騒がしくなるかもしれないけれど、ヨンジュくんが亡くなった当時ほど荒れることはないだろうから。Aちゃんも宿舎にいる限りは記者に追いかけられることもないだろう。
 それに、Aちゃんの隠さなければいけない部分が少しでも減ったなら、ある意味良かったと思う。Aちゃんは他人に嘘をついたり隠し事をするにはあまりに真面目で、優しすぎる子だから。経緯はどうあれ、自分の口から吐き出した分、Aちゃんの悲しみも重荷も減るはずだ。



(……でもきっと、色々変わってしまう。それがAちゃんに降り掛かるかもしれないのは、嫌だし怖いな……)

 そうだとしても、そう納得しようとしても。やっぱりAちゃんの過去は、普通に生きてきた人にとってはあまりに重い。

 AちゃんがヨンジュくんやN͜͡umberの話をする時は明るい話ばかりで、事件当時の暗い話をせず、いつだってにこにこ穏やかに振舞っていたから。何より完璧すぎる雰囲気から、きっとみんなは何処かでAちゃんが「何に対しても傷つかない冷静で強い人」だと思っていたんだろう。
 でも、本当はそうじゃなくて。Aちゃんの告白によって、Aちゃんには「親友を亡くした上に自身のグループの曲を歌えなくなって、もう二度と親友の夢を叶えてあげられなくなった」という深すぎる悲しみや絶望があって、それが今もAちゃんを苦しめていることが明らかになった。だからこれから先、Aちゃんへ向けられる目や、接し方は少なからず変わるはず。その変化がAちゃんを傷つけて無理をさせないかが、心配だった。


 秘密を作りすぎたせいか、Aちゃんは人と深く関わることを諦めてしまっている所がある。もしこの告白がきっかけで腫れ物扱いされて避けられるようになったら、Aちゃんはどんなに悲しくても仕方ないことだと受け入れてしまうと思う。なんなら、「みんなに気を遣わせたくないから」と自分から独りを選ぶかもしれない。

 Aちゃんは本来、人と関わることが好きで、真面目な反面抜けてて、ちょっとだけお茶目で、他人に甘えたい気持ちもある普通の女の子だ。それなのにいつも空気を読んで、誰も傷つけないよう自分の本心を抑えている。それによって自分が一番傷ついてしまっても、だ。





・

342.普通の女の子（ミン・ハミン）→←340.正しい選択（ミン・ハミン）

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す