「君は悪くない」7

325.事実 ページ28

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(……ああ、ついに知られてしまった)

 ステージの上から会場を見渡しながら、そう思う。

 N͜͡umberのメインボーカルだったナナが、メンバーであり親友のヨンジュの死後、N͜͡umberの曲を何一つ歌えなくなって。そのせいでN͜͡umberは解散したということ。今も、ナナはN͜͡umberの曲を歌えないままであること。
 素性と共にずっと隠されてきたそれ。むしろ素性以上に知っている人が限られていたそれが、同じチームのメンバー、先生方、他のチームの練習生、スタッフの方……この場にいる全員に知られてしまった。今ここに居ない練習生にこの話が伝わるのも時間の問題だろう。


(これから、"事実"になってしまうんだ……)

 何より、今この場面はカメラに納まっている。あまり皮肉っぽいことは言いたくないけれど、制作側にとって私の告白は思ってもみなかった「撮り高」だろうから、放送で使わないわけがない。番組を盛り上げるためにナナに参加を依頼した番組なのだから、むしろ他を削ってでも多く使うはずで。つまり番組を見ている人にもN͜͡umberの本当の解散理由を知られてしまうし、なんならSNSで話題になって、番組を見ていない層にも伝わってしまうのだろう。

 別に、この場面を放送するななんて言うつもりはない。この番組に参加すると決めた時点で、自分がどんな編集をされても構わないと覚悟は決めていたから。参加を決めたきっかけはどうあれ、私はいち参加者でしかないのだから、条件以上のことを求めるつもりなんてない。


 それでも、そう分かってはいても、自分がN͜͡umberの曲が歌えないことが周知の事実になるのは、怖かった。もう必死になって隠さなくていいんだ、平気な振りをしてN͜͡umberの曲に向き合わなくていいんだ、という肩の荷が下りたような安堵もある。でもやっぱり、この告白によってN͜͡umberは本当の意味で死んでしまったような気がして。



(……馬鹿だな、私。とっくの昔に諦めはついてたはずなのに……)

 もしかしたら私は、時間が経てばまたN͜͡umberの曲を歌えるようになって、N͜͡umberとしてステージに立てるんじゃないかって。そうしていつかヨンジュの夢を叶えられるんじゃないかって。そんな、馬鹿げた幻想をどこかで持ち続けていたのかもしれない。だから、これを誰かに知られて、認めるのをずっと避けていたんだ。

 本当に馬鹿だと思う。ヨンジュも、N͜͡umberも。死なせたのは他の誰でもない、私なのに。





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