312.一位の子 ページ15
・
「良かった、ジャンハオ兄さんいた……」
「……ナナ? どうしたの?」
フェテク兄さんと別れて、ジャンハオ兄さんを探しにとりあえず『TOMBOY』組が使う練習室に行ってみると、そこには一人で練習をするジャンハオ兄さんの姿があって。思ったより早く見つかって良かった、しかもちょうど一人みたいだし話しやすいな、と内心ほっとしながら、突然の私の登場に驚くジャンハオ兄さんに「お疲れ様です」と小さく笑う。
「ちょっとジャンハオ兄さんに話があって。邪魔しちゃってすみません」
「全然大丈夫だけど……わざわざこんな時間に話?」
「はい。明日の朝とかでも良かったんですけど……できればすぐに話した方がいいかなって」
「うん? そんな大事なことなの?」
不思議そうな顔をするジャンハオ兄さんに頷いてから、私は「実は……」と説明した。ハンビンが悩んでいる様子で、それに気付いたウムティ兄さんとホンハイの前で「上手く出来そうにない」と涙を流していたことを。
「そんなことが……確かにハンビン、悩んでる感じだったけど、まさかそこまで思い詰めてるなんて……」
あんなに近くに居たのに全然気付かなかった。私の話を聞いたジャンハオ兄さんは胸を痛めたように、苦しそうに呟いた。
「俺もたまたまその様子に居合わせちゃって、まさかハンビンがってびっくりしたんですけど……一緒にいたフェテク兄さんから、ハンビンがスランプみたいなものになってるんじゃないかって聞いたんです。
多分、ハンビンはシグナルソングからずっとセンターで1位で、みんなに認められる存在だから……期待される以上を見せなきゃいけない、成長しなきゃいけないって、そういうプレッシャーに押しつぶされそうになってたんじゃないかって」
1位にふさわしい子。フェテク兄さんがハンビンに対してそう言ったように、みんながハンビンを「1位の子」として見ているのは分かる。
私もそうだ。どうして今まで見つからなかったのだろうと不思議になるほどの高いビジュアルと実力。何よりそれが嫌味にならないほど明るく、謙虚で優しい性格。それを持ち合わせたハンビンほど1位が似合う人はいないと思っているし、このままその座を守って欲しいとも感じてしまう。
1位が似合わないと非難されるよりは遥かに良い。それでも、1位が似合う、それ以外有り得ないとすら思われてしまうのは逆にハンビンを苦しめていたのだと、フェテク兄さんの話で気付いた。
・
1892人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アップルパイ(プロフ) - 7さん» N͜͡umberのメンバーまで好きでいてくれて嬉しいですし、素敵なボイプラ関連の作品がたくさんある中で一番好きと言っていただいてとても恐縮です……! まだまだ長いとは思いますが、完結まで書きたいと思っているので、これからも読んでいただけたら幸いです。 (10月6日 20時) (レス) @page27 id: ce8ce21ff5 (このIDを非表示/違反報告)
アップルパイ(プロフ) - 本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好きさん» コメントありがとうございます! しばらくシリアスなシーンが続きますが、これからも読んでいただけたら幸いです! 本当に展開が遅くて申し訳ないのですが、更新頑張ります! (10月6日 19時) (レス) id: ce8ce21ff5 (このIDを非表示/違反報告)
7 - N͜͡umberのみんなに会いたくなるしYouTubeでMilkywayの映像を検索したくなりました。ボイプラ系の中で一番好きな作品です。ぜひ完結までいってほしいです。応援してます (10月3日 14時) (レス) @page27 id: 643f8a8165 (このIDを非表示/違反報告)
本屋と図書館とガソリンスタンドの匂いが好き(プロフ) - 主人公の気持ちが細かく描かれていて凄く悲しくなりました。続きを楽しみに待ってます。 (10月2日 23時) (レス) @page27 id: b9b005fe2b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:アップルパイ | 作成日時:2023年9月17日 5時