君との距離は(S.S) ページ4
A「…近いです、誠也くん。」
そんなことはとっくに分かっている。
末澤「当たり前やん、近付いてるんやから」
潤んだ瞳が俺を見上げる。
その身長差、約8センチ。
衣装で厚底の靴を履かない限り、いつだってこの距離を保ってきた。
A「…離れてください、」
Aの背後は壁。
逃げ道はない。
末澤「無理」
同じグループのメンバーというだけの理由で油断して隙を見せまくるAが悪い。
A「何でそんな急に…」
どこが急やねん。
Aが鈍感すぎるが故に気付いていなかっただけのことで、俺はずっとずっと思いを募らせていた。
そんなことを知りもせずに毎日呑気に笑って俺の名を呼んで、楽しそうに喋りかけてきて。
本気で腹が立つ。
たった8センチがもどかしくて、縮めたくて仕方がないのに届かなくて辛くなって。
そんな日々を過ごす俺のことを少しでも考えてくれたことがあるのだろうか。
廊下から声が聞こえる。
多分―
いや、確実に数秒でメンバーがこの部屋の扉を開ける。
だけど離れられない。
離れたくない。
寧ろもっと近付きたい。
末澤「…A」
残り7センチ。
Aが瞬きを繰り返す。
A「皆来ますよ、」
6センチ。
聞こえてくる声がリチャのものだと分かった。
末澤「ええよ、別に」
5センチ。
全くもって良くない。
こんなところ見られたらどう思われるか―
A「誠也くん、」
4センチ。
焦点が合わない。
ぼやけたAの表情から感情を読み解くことはできないまま。
末澤「ん？」
3センチ。
鼓動が鳴り響く。
Aに聞こえてしまいそうなほど大きく―
A「駄目ですって、」
2センチ。
震える唇が重なり合うまであと僅か。
末澤「…好き」
残り1センチ。
A「…私も」
末澤「えっ？」
その言葉に面食らった俺は完全にタイミングを逃し、口付けをすることなく扉が開く音を聞いた。
瞬時に距離をとって怪しまれないよう振る舞うも、頭の中は先程の台詞で埋め尽くされていく。
草間「…熊？」
末澤「は？」
草間「ウロウロして熊みたいやで」
末澤「…別にええやんか」
動揺が隠しきれない。
さっきの聞き間違いちゃうやんな？
"私も"って"私も好き"って意味やんな？
身長差、約8センチ。
だけど心の距離はきっと―
Fin
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わさび醤油(プロフ) - kkさん» 最後まで楽しんで頂き、こちらこそありがとうございました！今後も読んで頂けるように頑張ります！ (2022年8月17日 16時) (
レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
kk(プロフ) - 紅一点設定の短編集ずーっと楽しく読ませて頂きました！たくさんの素晴らしいお話をありがとうございました😍また新しい作品も楽しみにしています💕 (2022年8月17日 1時) (レス) @page50 id: 797470a670 (このIDを非表示/違反報告)
わさび醤油(プロフ) - なつきさん» ありがとうございます！次の作品もお楽しみに…！ (2022年8月16日 9時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
なつき(プロフ) - 素敵なストーリーをありがとうございました。新しい作品を楽しみにしています！ (2022年8月16日 1時) (レス) @page50 id: 292579ac7e (このIDを非表示/違反報告)
わさび醤油(プロフ) - とんとんまるさん» 素敵なコメントありがとうございます！とっても嬉しいです。今後のお話もお楽しみに…！ (2022年8月13日 6時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わさび醤油
| 作成日時：2022年7月13日 2時
