壁の向こう(F.J) ページ24
A「待って、」
そんな言葉に従う余裕はない。
俺は今日1日ずっとこうしたくて仕方がなかったのだから。
A「お風呂…」
藤原「うるさい」
口を口で塞ぐ。
ゆっくりと絡み合う舌に鼓動が早くなっていく。
どうしたって愛おしい俺の彼女。
だけどそれと同時に同じグループのメンバーである事実が重くのしかかる。
バレた時、何て言い訳したらええんやろ―
そんなことを思いながら過ごす日々にうんざりしている。
A「丈くん、」
デビュー以来急激に増えた仕事量と反比例するように減っている2人きりの時間。
最近は満足に会話すらできていないような気がする。
窮屈な関係性。
だけど離れることなんてできない。
絶対に。
A「丈くんあかん、」
仮住まいであるホテルの一室。
壁は薄い。
藤原「聞かれるで」
A「えっ？」
藤原「隣」
俺が指を差した先にゆっくりと視線を移すA。
藤原「泊まってんの大橋やで」
A「…意地悪」
聞かれたら困るのは俺も同じ。
意地悪でも何でもない。
藤原「どこがやねん」
瞳を潤ませこちらを睨むAの首筋に顔を埋めた。
大好きな香りを胸いっぱいに吸い込む。
去年のクリスマスに俺がプレゼントした香水を毎日のようにつけてくれるAが愛おしくて堪らない。
愛したいけど愛されたい。
甘えたいけど甘えられたい。
尽くしたいけど尽くされたい。
A「…丈くん？」
藤原「ん？」
下着に手をかけた時、Aが俺の名を呼んだ。
A「スマホ鳴ってる」
藤原「えっ？」
耳をすませば確かに聞こえるバイブレーション。
マナーモードにしていたせいで気が付かなかった。
体を起こして端末に手を伸ばす。
視線を落とした画面に表示されている"大橋"の文字。
藤原「…噂をすれば」
A「はっすん？」
その言葉に頷いて通話ボタンをタップした。
大橋「あ、丈くーん？」
藤原「何やねん」
大橋「ちょっと話したいことあるんやけど」
どこまでも空気が読めない大橋に腹が立つ。
藤原「何？今忙しいし後にしてくれへん？」
大橋「あ、そのことやねんけど」
藤原「えっ？」
大橋「聞こえてんで、さっきから」
事務所の皆様―
もう少し壁が厚いホテルに泊まらせてくれませんか？
大橋「大丈夫やで丈くん、誰にも言わんから」
藤原「…くっそ…」
大橋「てか俺あれやで！前から気付いてたで！」
藤原「何やねん！はよ言えや！」
Fin
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わさび醤油(プロフ) - kkさん» 最後まで楽しんで頂き、こちらこそありがとうございました！今後も読んで頂けるように頑張ります！ (2022年8月17日 16時) (
レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
kk(プロフ) - 紅一点設定の短編集ずーっと楽しく読ませて頂きました！たくさんの素晴らしいお話をありがとうございました😍また新しい作品も楽しみにしています💕 (2022年8月17日 1時) (レス) @page50 id: 797470a670 (このIDを非表示/違反報告)
わさび醤油(プロフ) - なつきさん» ありがとうございます！次の作品もお楽しみに…！ (2022年8月16日 9時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
なつき(プロフ) - 素敵なストーリーをありがとうございました。新しい作品を楽しみにしています！ (2022年8月16日 1時) (レス) @page50 id: 292579ac7e (このIDを非表示/違反報告)
わさび醤油(プロフ) - とんとんまるさん» 素敵なコメントありがとうございます！とっても嬉しいです。今後のお話もお楽しみに…！ (2022年8月13日 6時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わさび醤油
| 作成日時：2022年7月13日 2時
