透明な手錠(S.S) ページ25
華奢な手首にブレスレットが光る。
A「どう？似合ってる？」
末澤「ええやん、」
そっと手を伸ばして触れてみる。
なぞるように、優しく。
A「くすぐったい」
末澤「ごめん」
俺の手首についているものと同じデザイン。
所謂"お揃い"ってやつ。
A「ありがとう、誠也くん」
微笑みが眩しい。
思わず目を細めたくなるほどに。
そもそも俺は相手問わず服装やアクセサリーを揃えて着用することが好きではない。
メンバーや他のJr達とたまたま被ることはあっても、自ら同じものを買うようなことはしない。
勿論それは彼女に対しても例外ではない。
だけど今日、俺はAにこのブレスレットを贈った。
年に1度の誕生日という特別な日に。
それには理由がある。
Aはメンバーと度々お揃いの服を購入している。
メンズのTシャツや性別問わず着用できるアイテム、サイズ展開が幅広いスニーカー等、内容は様々。
相手も様々で、正門とお揃いのものもあれば小島とお揃いのものもある。
大晴や晶哉、リチャとも。
そこに俺がいないのは流石に気に食わなかった。
"お揃い"という文化が好きでないとはいえ、何となく腹立たしく思えた。
別にペアルックを着て歩きたい訳じゃない。
1つでいいから俺との特別な何かを身につけてほしかった。
そんな魂胆を知る由もなく純粋に喜ぶAがやっぱり眩しくて、何だか申し訳なくなって。
悪意はないものの、善意でもない。
俺のエゴに過ぎないプレゼント。
俺はただのメンバーじゃない。
れっきとしたAの彼氏だ。
その強い思いがあるからこそメンバーに負けたくなくて、どうしても張り合ってしまう。
子供じみた考えかもしれないけれど、どこか1つでも劣っていることが許せない。
ブレスレットを選んだことに特別な意味はない。
手錠―
そんな考えが一瞬浮かんだけれど、すぐに消えてなくなった。
末澤「改めておめでとう」
A「ありがとう、今年もよろしくね」
末澤「正月みたいやな」
A「正月みたいなもんやろ」
もう一度手首に触れた。
無機質な金属をなぞる。
A「くすぐったいって」
末澤「ごめん」
こんなもので縛りつけておこうだなんて思わない。
形あるものではなく、目に見えない気持ちでAの心を手にしていたい。
―即ち、透明な手錠で。
末澤「毎日つけてな」
A「うん、勿論」
Fin
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わさび醤油(プロフ) - kkさん» 最後まで楽しんで頂き、こちらこそありがとうございました！今後も読んで頂けるように頑張ります！ (2022年8月17日 16時) (
レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
kk(プロフ) - 紅一点設定の短編集ずーっと楽しく読ませて頂きました！たくさんの素晴らしいお話をありがとうございました😍また新しい作品も楽しみにしています💕 (2022年8月17日 1時) (レス) @page50 id: 797470a670 (このIDを非表示/違反報告)
わさび醤油(プロフ) - なつきさん» ありがとうございます！次の作品もお楽しみに…！ (2022年8月16日 9時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
なつき(プロフ) - 素敵なストーリーをありがとうございました。新しい作品を楽しみにしています！ (2022年8月16日 1時) (レス) @page50 id: 292579ac7e (このIDを非表示/違反報告)
わさび醤油(プロフ) - とんとんまるさん» 素敵なコメントありがとうございます！とっても嬉しいです。今後のお話もお楽しみに…！ (2022年8月13日 6時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わさび醤油
| 作成日時：2022年7月13日 2時
