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転校前のティータイム ページ7

お題【転校】【自転車】【めっちゃ食う可愛い女】【モンブラン】【愛】【鬱】



 彼女は走っていた。自分に出せる全力をかけて走っていた。現在の時刻は八時、五分後に朝のHRが始まろうというのに、彼女は校門を通過してすらいなかった。転校前の最終日に遅刻だなんて、笑えない冗談はよしてくれ。泣きたくなるが、それでも持てる身体能力の全てを使って走る。
 真っ向から自分を押してくる向かい風に体当たりをかまし、スカートを揺らし、カバンの中で教科書をぶつけてがたがた言わせながら足を動かす。地面を蹴るようにして、ぐんと体を前に押す。腕を前後に大きく振る。まっすぐ前を、見つめる。

「よっ、乗ってくかァ?」

 そんな時、自転車のキーッというブレーキ音を鳴らして自分の横に止まったのは、見慣れた幼馴染だった。彼もまた遅刻間際という感じで家を飛び出してきたのだろう。もう九月とはいえまだ残暑は厳しく、朝でも暑い日はある。彼はそんな日差しによって少しばかり汗が滲んでいるようだった。それを見てとても良いタイミングで来た、とその自転車の後ろに彼女は飛び乗る。それと同時に彼女らを乗せた自転車が前へ進み出す。初めはゆっくり、次第に早くなり、どんどんその場から遠ざかっていく。

「いやー流石!めっちゃタイミングいい!」

 風の中で彼女はそう言った。その長髪を顔の周りで遊ばせながら、風を切る音に負けないように少しいつもより声を張って。

「へっ、褒めても何も出ねーよばぁか!よっしゃ飛ばすぞー!」

 そう言って彼女は幼馴染と共に、校門をくぐって行った。

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いふ(プロフ) - 文々。さん» ひえ、褒めていただきありがとうございます…!正直自分の文に自信を無くしていたので文々さんのお言葉で少し自信が持ちました。邪神召喚の方も、小説家Aの方もいつも見させてもらっているほど大好きです!ほどほどに頑張ってください。 (2021年1月24日 9時) (レス) id: ca7a82974a (このIDを非表示/違反報告)
文々。(プロフ) - いふさん» 的確なアドバイスが出来ない上、私が思うにいふ様の文はとても素敵なので、是非そのままいってほしいなと思っております……! (2021年1月23日 18時) (レス) id: d545e4385e (このIDを非表示/違反報告)
文々。(プロフ) - いふさん» お褒めの言葉ありがとうございます!飽きない地の文に関しては私も現在研究中でして、自分の何が飽きさせずにいふさんに読んでいただける原因となったのかが分からず…… (2021年1月23日 18時) (レス) id: d545e4385e (このIDを非表示/違反報告)
いふ(プロフ) - 私はいつも地の文をすっ飛ばして読んでしまう癖があるのですが、この作品の地の文はなんと言うか飽きない感じがあって、地の文も含めすぐに読み終わってしまいました…。どうしたら読者さんが退屈しないような地の文等を作れますか?宜しければアドバイスお願いします! (2021年1月17日 18時) (レス) id: ca7a82974a (このIDを非表示/違反報告)
ウサッキー(プロフ) - 文々。@ortensiaさん» 適当な小説ものばかりなので、ちゃんと書いた小説を見て頂きたいと思ってしまった(((。アドバイス、ありがとうございました! (2020年8月25日 20時) (レス) id: f7bf947b75 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:文々。 | 作者ホームページ:http:  
作成日時:2020年8月25日 11時

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