まふまふ*いつも一緒に。*白雨 ページ16
新しい生活、それは前向きな意味もあるが、それとは逆に新生活を迎えることでマイナスな方向に物事が進むこともある。
例えば……こんな風に一人暮らしを始めるために都会へ出て来たというのに、ずっと離れたかった過保護な幼馴染みが着いてきたりとか。
憎い、という気持ちを込めて目の前でにこにこと微笑んでいる彼を睨みつける。
やっと、やっと一人暮らしの許可を貰ったのに……っ、なのに一人暮らしじゃないじゃないか!!
「まふくん……私、ついてこないでって言ったよね」
「だって心配なんだもん!僕のAが他の男に誑かされる姿なんて見たくないし、それにもしかしたら家の中で倒れてもう二度と会えなくなっちゃうかもしれないし……」
そう言ってグズグズしてその場から動こうとしない彼は私の幼馴染みであり隣の家同士に住んでいたまふくんだ。しかし、どうして彼がここにいるのかが分からなかった。
というか、そもそも僕のってなんだ、僕のって。いつの間に私はまふくんのものになったんだ。
昔から彼は過保護で永遠に私の周りをぐるぐると回って他人を寄せつけまいとしていたせいで、私には友達はおろか、ちゃんとした女友達もいない。
だから私はまふくんから離れたかったのに……
「何してくれてんのお母さん!!」
「だって、Aのお母さんが心配だから僕にもついて行ってほしいって言うから……」
「はぁ?!」
「それに、将来は結婚する仲なんだからいいでしょ?って言われちゃって……ふふ」
満更でもない様子で照れたように笑ったまふくんは、頬を赤く染めてこちらをチラチラと盗み見るようにして見てきた。
この野郎、絶対に許さないからな!!
後々話を聞いたのだが、確信犯である彼は私が最近どこかよそよそしいという理由で私の母に何かあるのではないかと探りを入れたらしい。
そして、母から私が一人暮らしを始めるという情報を仕入れてここにいるのだという。
本当に冗談じゃない、と思った。
「これじゃ私、この歳になって彼氏も作れないじゃん……」
「え?僕がいるじゃん」
「幼馴染みは恋愛対象外なの!ばか!」
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作者名:作者一同 x他4人 | 作成日時:2020年4月5日 19時