夏色の君は知っている

私は… ページ26

はっ…はっ…




どこまできたんだろ…






肩で息をしながら、少しだけスピードを緩める。





・









・









・









・









…ここは


どこ…？






真っ暗な中

必死に走っていたらいつの間にか知らない団地まで来ていた。







帰れなくなったらどうしよう…！



やだ...




やだやだやだ！出てこなきゃよかったっ！






と、







ガタン！！






え、な、なにっ！
音のした方を見ても何も見えない。



こわいよ…上杉君っ！

わたしは恐怖に震え、目をギュッと固くつむって 全速力で逃げた。





どれだけ走ったのか。


足に疲労が溜まってきたころ、目の前が急に明るくなった。
おそるおそる目を開けると…真っ暗な世界に コンビニがぽつりと一軒。





助かったっ！







地獄で仏に会ったよう、というのはまさに こう使うのかと身に染みて感じる。


わたしはコンビニに吸い付けられるかのように 近寄って行った。






あと少しでコンビニ。小さな路地を通り過ぎたその時






きゅっ






冷たいものに 腕を掴まれた。






っ...！！！！！！







またも、背筋が凍り付き、恐怖に一瞬にして包まれる。






やだ...やめてっ！！


やだ！こんなとこで死にたくないです！
私なんて食べてもおいしくなんかないです…！
お願い、お願いだからどこかへいってっ！








「…な！…花！おい！立花っ！」




上杉君の声を真似するなんて…え？...うえ…すぎ君？




そーーっと目を開くと、そこには顔を真っ青にしてこちらを覗き込む上杉君がいた。
うえすぎくん…上杉君っ！！





安堵と喜びで思わず、上杉君に抱きついた。
頬を涙が伝う。




上杉君は少し戸惑いながらも、私を抱き返して優しく背中をさすってくれた。





・・・







10分…20分…いや1時間経ったのかもしれない。

ようやく私が落ち着いたころ、上杉君はスッと私を離し 少ししゃがんで私と視線を合わせた。




「それで？ こんな夜中に、んなとこで。なに、してんの。」






怒ってるように聞こえるかもしれないけど 私は知ってる。



これは彼の「心配」だってこと。そしてこの言い方は「照れ隠し」だってことも。



だって。





その優しさ
その気遣い
その知性


誰も気づかなくても
誰も理解しなくても
誰も…それを好きにならなくても








私は―――――









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橘綾

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