夏色の君は知っている

好きだったのは ページ24

“みんなを…平等に好きじゃなかったの…？”







朝起きてからというものそればっかりが頭をぐるぐるぐるぐる回ってる。




その無限ループを止めたくて顔を洗いに行ったけど、冷たい水が顔を跳ねるだけでやっぱりそれは留めなく流れて止まってはくれなかった。









_____「だから…だから俺にしろよ。」_______






この言葉と唇の感触がふとした時に浮かぶ。





夢の中の上杉君の表情は、凛としていた。だけどそれでいてどこか寂しさがあった気がする。






その言葉を口にした上杉君の目が、口が、顔が、…どうしてこんなに胸が締め付けらるんだろう。



どうしてこんなにも心がギュってなるんだろう。



どうしてこんなにも顔が熱くなるんだろう。








どうして、どうして…








恋なんてしたことない。するはずない。みんなが好きだった。



これからもみんなをずっと好きでいるんだと、みんなもそうなんだと勝手に思ってた。







だけど…









ふと黒木君が言っていたことを思い出した。








_____ 恋って楽しいのかな。クラスのみんなが誰かに片想いしてるみたいなの。でもみんなキラキラしてる。



なるほどね、意外と楽しいのかもしれないよ？



なんで？だって片想いだよ？



そんなお子様なお姫様に教えてあげようか。


恋は理屈じゃないんだよ。



理屈じゃ、ない？



そう、ドキドキして胸が締め付けられるんだ。
だからたぶん、クラスの子達はそれを楽しんでるんじゃないのかな？少なくとも、俺はそう思うよ。



それを楽しむ…。
黒木君はそういうことが、あるの？



どうだろうね。
まだお子様なお姫様には難しかったみたいだね。じゃあまた明日、アーヤ。______









“恋は理屈じゃないんだよ。”





“ドキドキして胸が締め付けられるんだ。”









「ドキドキして、胸が締め付けられる…」


「理屈じゃ、ない…。」







黒木君の言葉を口に出してみた。









「私、上杉君が… 好 き なんだ…」





“ 好 き ” の2文字が妙に響いて、また夢の感触が戻ってきた。








___「ぜってー後悔させねーから。」______









私、上杉君が好きなんだ。

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