夏色の君は知っている

気持ち ページ19

自分でも分からない。

けどそう口から言葉が出てきた。



「なに？」




そう首をかしげるように聞いてくる彩に胸がぎゅっとなる。

...かわいい


そう思ったのは何万回目だろ。



フラッシュバックする記憶。

何年も。



君を見つめてきたから。



だから俺は。

早くなる鼓動と冷たくなる手。




緊張してる。

でも。



言わなくちゃ。

そう思って大きく息を吸い込むと。



口を開いた。






「俺は。




彩が…彩の？
彩のわらった顔が好きだ。」





ん？

それじゃあただの面食いじゃね？


っていうかこれって告白になってねーじゃん！




「…まって、違う。顔じゃなくてその！」






あわててそう言う。

くそ...


こんなん計画してねーからなんて言えばいいのかわかんねーよ！



告白なんか...

したことねーし。






ああ、もう！




わからなくなって唇をかみしめる。




でもその瞬間。

わかった。




告白なんてどうやっても変わらない。


まあそれは言いすぎかもしんねーけど。





どうせ好きなら好き。

付き合いたくないなら付き合わない。



それだけのこと。


これは俺がどうこうしたからって変わるもんじゃない。







ありのままの俺の気持ちを。




立花に。


彩に。







「俺は彩が好きだ！」





暗闇で彩の表情はよく見えない。


けど。






「俺は誰よりもお前を見て来た。

ずっと好きだった。」





だから。




「あんなやつだけには絶対まけねー。


だから…だから俺にしろよ。

ぜってー後悔させねーから。」





これが俺の気持ち。



だれにも渡したくない。


これだけは譲れない。






「だから俺と...



付き合えよ。」




言いきった。

緊張と期待で胸がはちきれそうになるのを抑えて、じっと下をみつめた。





お疲れ、俺。



よく頑張ったと思う。



後は結果だけ。





そう思っていると。




「上杉君。」


彩のいつもより重そうな声が聞こえた。



「うん。」



からからになったのどを無理やり動かしてそう返事をすると。








ばんっと大きい音がしてあたりが一気に明るくなった。





花火だ。




こんな時に...


計ったように上がる花火を見てびっくりする。




そして同時に花火で明るくなったおかげで彩の顔が見えた。



いつもみたいに笑顔はない。

真剣な目だった。




でも。


いつもより顔が赤いことは確かだった。



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上杉奏

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