一度、だけ。 ページ18
-上杉side-
はふっ!
わたあめにかぶりつく立...彩を愛おしく見つめる。
「ねー、上杉君も食べないー?美味しいよ!」
一口サイズをちぎり、俺の手元に持ってくる。
―――っ...
「はやく、受け取って。体温で溶けちゃう。」
俺はその綿あめを受け取る代わりに、彩の細く白い腕を掴んだ。
そのまま、自分の口元に持っていき、パクっと口に入れる。
どこまでも甘い味と香りが口に広がった。
甘っ...。
ふと、横を見ると頬を紅潮させた彩がこちらを見ていた。
「お...美味しい...でしょ?」
甘い...けど。
「美味しい。」
はぁぁ。俺らしくねぇ。
変な俺。
***
「さっきさ、俺、すげー焦った。」
夏祭りの陽気な雰囲気のせいか、心地良い明るさと暗さのせいなのか、それとも浴衣姿の彩のせいか...とにかくすべてにおいて調子が狂う。
こんなこと言うなんて微塵も思っていなかったのに、言ってしまったことに気づいたのは、それを口にした後だった。
彩はハテナマークを頭上に浮かべ、俺をのぞき込む。
...そーゆーの、心臓もたねーからマジやめてほしい。
目で続きを促す彩に負けて口を開く。
「あいつに、お前を盗られたら...マジでどーすっかなって思った。」
うわ、俺何言ってんの。
「盗られる」ことの心配を話すなんて、「自分に自信がない」と人前で言っているようなもの。
しかも、自分のものでもない、ただただ片思いをしている子に言うなんて。
俺、ださ。
「悪ぃ、聞かなかったことにして。」
右手で両眼を覆い、彩に背を向ける。
途端、肩に手が乗る感覚を覚え、思わず振り向いた。
すると彼女の真剣な眼と合う。
「夕とはそういう関係じゃない。たまたま二人で学級委員に任命されただけ、それ以上はなにもない。」
そうは言うけど、あっちはだれがどう見ても、お前に好意抱いてんだろ。
「それより、最近不思議なの。上杉君の事になると急に緊張したり、胸がギュッてなったり。なんでだろう。医療に詳しい上杉君ならわかるかなーって思って、聞こうと思ってたんだ。」
は?
彩は俺をみてフワァッと微笑んだ。
っつ...もうどうなっても知らねー。
俺は悪くない。
「一度しか。」
興奮で舞い上がる胸を宥め、呟く、という表現のほうが適当かもしれない位の声を放つ。
「一度しか、言わねーかんな。」
――――
橘綾
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黒木玲奈(プロフ) - 夏蜜柑さん» そうですね、書いてるときも思うほどです。wありがとうございます!頑張ります! (2018年8月25日 21時) (レス) id: 267fae23b3 (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑 - 上杉君カッコイイ アーヤ自分の気持ちに素直になって!と思っていました更新頑張ってください応援しています (2018年8月25日 20時) (レス) id: fa082eb104 (このIDを非表示/違反報告)
黒木玲奈(プロフ) - *suzu*さん» 楽しんでいただいてるようで、幸いです!ありがとうございます、作者一同頑張ります!これからも、どうぞ夏色をよろしくお願いします。 (2018年8月25日 11時) (レス) id: 267fae23b3 (このIDを非表示/違反報告)
*suzu* - すごくドキドキさせてくれるお話です!榛名くん, 上杉くんがカッコいい!これからの展開が楽しみです。まだまだ暑いですからお体に気をつけて更新頑張ってください。 (2018年8月23日 11時) (レス) id: a962bd5f54 (このIDを非表示/違反報告)
橘綾(プロフ) - 茉莉さん» コメントありがとうございます!そういっていただけて作者一同、大変うれしいです!皆様の期待に添えるよう、頑張ります! (2018年8月11日 18時) (レス) id: 785a5fde57 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:上杉奏&美門智&橘綾&黒木玲奈 x他3人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/aishou_kz
作成日時:2018年4月10日 21時