検索窓
今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:108,463 hit

ケンタイキ ページ2

家に帰りライブの余韻に浸りながら彼のことを考えていた。歌が大好きでリスナーが大好きで、なにより浦島坂田船のメンバーを愛している彼。
少し前までなら、私のことも見ていたのに。どうして彼は突然私の事を無いもののように扱い始めたのだろう。見当もつかなかった。





かちゃりと鍵を開ける音をすれば打ち上げから帰ってきたと思われる渉が私の方へ歩いて来た。彼の歩くスピードは私を見つけると速くなった。







「なあ、お前さなんで今日来たの?」






数ヶ月ぶりの会話。
本当なら喜ばなきゃ行けないはずなのに背筋が凍る位の冷たい声と瞳孔が勝手に開いていく身勝手な私の体が心を震えさせた。





『たま、たま。チケットが当たったから、』




確かにチケットは自引きで手に入れたし、なにより渉のライブに行きたかっただけ、ただそれだけ。






「勝手に来るの辞めてくんね?俺だってこたぬきの為に歌ってるしお前の為じゃない」







冷たい目と声で私の体をズタズタにして渉は部屋に入っていってしまった。
"お前の為じゃない"決定的な一打だった。








『前までは、歌みたも直ぐに聞かせてくれたのになあ、』









付き合い始めた頃は、彼が歌ってみたを始めたての時だった。まだ慣れていない歌ってみた動画。まだ慣れていないネット。叩かれることだって少なくなかった。寧ろ多かったりもした。
けれど彼は歌が好きで歌い続けた。
坂田君という彼を理解してくれる友人にも出会えた
志麻君という彼を励ましてくれる仲間にも出会えた
センラ君という彼を支えてくれるメンバーにも出会えた。他にもまふまふくんやそらる君にも出会えた。彼の人生は波乱万丈だったかもしれない。でも頑張ろうと必死に藻掻く彼に皆が惹かれて行った姿を1番近くで見てきて幸せだった。









────









「A!聞いて、この曲」




『渉が好きな曲、?』



「そう、俺が好きな曲でAに歌いたい曲」





深呼吸をひとつして目を優しく開いて歌った彼
目の前に差し伸べられた手を見つめて笑ったあの日
時折泣きそうになりながらも歌い上げたあの曲。
彼は私の中で大きい存在だった、大きすぎる存在だった。







『もうここに居ちゃいけないのかな』







ふと目をしたテレビには今期最大の寒さと表示されており暖かくして風邪を引かないようにと注意喚起を繰り返していた

ケンタイキ→←ケンタイキ



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (179 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
410人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

Ria - 次の作品あれば楽しみにしています(*‘ω‘ *)この後の素直になってデレデレになるのを見てみたい…(笑) (2018年12月11日 1時) (レス) id: 72693a3d45 (このIDを非表示/違反報告)
ライチ☆(プロフ) - 読みながら涙を流しました。処女作とは思えないほど良い作品でした。次の作品を書かれるのでしたら楽しみにしてます。 (2018年12月10日 16時) (レス) id: bb5c35b9e5 (このIDを非表示/違反報告)
しゅがー - むっちゃいいです。凄い続き気になるのですが!!更新頑張ってください!! (2018年12月3日 18時) (レス) id: 1f604a1e22 (このIDを非表示/違反報告)
なまこ - 最高に面白い展開でドキドキします!更新楽しみにしています! (2018年12月2日 14時) (レス) id: 2a0d835366 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:一ノ瀬 旅人 | 作成日時:2018年11月19日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。