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口をついて出た言葉に自分でも驚くしか無かった。しかし、教授は私以上に目を見開いていた。けれども彼がそうしたのは一瞬のことで、少しだけ私を見つめたあと、少し心配そうに頷いた。
『わ、わたし…私は、』
あなたに伝えたい。その思いとは裏腹に荒くなる呼吸。家族のことを思い出すとどうしてもこうだ。
私の様子を見て、目の前の彼は私を気遣うように腕を伸ばした。
しかし、私はその腕をやんわり受け止めた。
『…だめ、話させてください、話したいんです、他の誰でもない貴方に。…手を、握っていて貰えますか。』
私がそう言うと、彼は一瞬躊躇いを見せたが、私の手を優しく握った。あたたかい、節くれだった指が、私の手に絡まる。
『…私、男の人が、怖いんです。』
声は震えた。教授の顔も見れなかった。けれども、私は必死の思いで言葉を紡いだ。
『それは、過去の、トラウマがあるからで。』
『私の9歳の誕生日の前日、父と母が口論になって、それで、父は…私に怒鳴りつけました。
… …「お前は、私の子でない」と。その時の父の表情や、気持ちや、全てが苦しくて、辛くて、気色悪くて、恐ろしかった。
その次の日、私の誕生日に母が亡くなったこともあって、余計、その記憶は鮮明に頭に残って…
… …何を、信じたらいいのかわからなくなってしまいました。』
話すと同時に過去の記憶がフラッシュバックした。我ながら、なんて悲しい誕生日パーティなのだろうと他人事のように思った。
初めよりも、教授の手を握る力が強くなっている気がした。
『…誕生日ケーキ、食べたかったな。』
私がそう呟くように零すと、いきなり体が前へと引っ張られた。
瞬間、とすん、と教授にぶつかった。私は何事かと思って、上を見ると、教授も私の顔を見ていた。その顔は、私よりも辛そうだったが、どこか慈しみを感じる表情だった。
なんだか、その顔を見て、途端に安心してしまった。私をそんな顔で見てくれる人が両親以外にもいるのだと。けれど同時に、両親を失った喪失感が9歳の誕生日ぶりに私を襲い…、つい、瞳から涙が零れた。母が死んでから初めて流す涙だった。
教授は壊れ物に触るかのように、私をとても軽く抱きしめた。
「漸く、君の事を少しだけ理解出来た…よく、頑張って話してくれた。…だが、無理をしすぎだ、馬鹿者」
涙はダムが決壊したように溢れて、教授の服を濡らした。
小さな影と大きな影はしばらくの間、寂しさを補い合うように寄り添っていた。
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マニ。(プロフ) - 猫田さん» ✉️。わかりました！これからも更新応援してます！ (1月5日 15時) (
レス) id: b32654e3a5 (このIDを非表示/違反報告)
猫田(プロフ) - マニ。さん» ありがとうございます！お気持ちは大変嬉しいのですが、今はこちらの作品の更新に集中したいと思っているので失礼ながら遠慮させて頂きます;; ですが、お話したいと思って下さって凄く嬉しかったです！ありがとうございます (1月5日 15時) (レス) id: 922d1d8c49 (このIDを非表示/違反報告)
猫田(プロフ) - もちもちさん» ありがとうございます！亀更新ですが、よろしくお願いします (1月3日 4時) (レス) id: 922d1d8c49 (このIDを非表示/違反報告)
もちもち - とっても面白いです！作者様のペースで更新頑張ってくださいね！ (9月18日 15時) (レス) id: c72e216da9 (このIDを非表示/違反報告)
猫田(プロフ) - 箱さん» こちらこそ、読んで頂けて嬉しいです！ありがとうございます (2023年2月25日 14時) (レス) id: 922d1d8c49 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：猫田 | 作成日時：2023年2月9日 21時
