御咄15 ページ15
｢……おい｣
『!! ……キド!?』
何かにぶつかった気がして横を向くと、そこにはいつもの｢技｣と書かれたエプロンをつけ、髪をポニーテールにまとめたキドがいた。
……気づかなかった……。
｢……おっ、おはよーキド！ いやぁ〜、今日も暑いねぇ〜!!｣
｢そうっすね!! じ、じゃあ俺達は先にリビングに行っ――｣
｢待て｣
僕達がそう言いながらそそくさとリビングに向かおうとすると、キドはセトの手首を掴んで引き留める。そしてセトが｢……な、何すか？｣と言いながら笑顔でキドの方を向くと、眉間にしわを寄せながら口を開いた。
｢お前、……何で昨夜俺の部屋に来なかったんだ？ 正直に言え｣
｢……えっと……しゅ、修哉と一緒に寝てたっす。約束を破った事は申し訳ないとは思ってるっすよ？ だけどその……年頃の女の子とひとつ屋根の下で、しかも同じベッドで寝るのはいけないと思って……ごめんっす｣
そう言うとセトは苦笑しながら指で軽く頬をポリポリと掻く。
……まぁ、嘘はついてないし正論だね。
流石セト……そう思っていると、セトの方を向いていたキドはセトの手首を離して僕の方を向いた。
｢カノ。昨日言ったよな？ セトは俺のだって｣
｢うん、でも僕と幸助は付き合ってるし。人の恋人を勝手に盗むのはいけないよ？｣
｢っ!! ……で、でも――｣
｢昨夜幸助が来なかったからっていう理由で幸助を殴ろうと思っているのなら、代わりに……僕を殴って。幸助にはもう、絶対に手を出さないで｣
僕は反論しようとするキドと目をまっすぐ合わせ、セトをキドから守るかのようにセトの前に立ってそう言う。
｢修哉……！｣
｢それに、……昨日夕食後に食べる予定だったキドのプリンは僕が食べちゃった訳だし？｣
アハハーと笑いながらそう言うと、俯いているキドがピクッと反応した。
｢俺のプリン、買ったはずなのにないと思ったらお前か……っ!!｣
｢!! キッ、キド落ち着くっす!!｣
｢お前は黙ってろ！ ……って、コラ逃げるな――ッ!!｣
僕はセトの方を向いてキドがそう言った瞬間、リビングへと駆け出す。
それから数分後に捕まり、たっぷりキドに殴られたのは言うまでもない。
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作者名：天ノ川夜月 x他1人 | 作成日時：2016年8月31日 15時
