【マギ】神出鬼没なマギ4.〜アルマトラン編.後編〜

第191夜 向けられるは狂おしいほどの執着心 ページ44

僕らの間を風が吹き抜けていく。




「今までどこにいたんだい? 式典にも参加しないで。すごく心配したよ」




にこにこと笑うアルバ。



「ねぇ知ってるかいA。君、罪人になったんだよ?」

「はい? 罪人…?」




誰が? 僕が? 罪人?
何を言ってるのアルバ。僕は何にも犯してないんだよ、罪人なんて冗談やめてよ。




「シバ王妃に追放された後、あの地に足を踏み入れただろう? それに式典にも不参加だったみたいじゃないか」

「人の命がかかってたのにそれが罪に問われるの? 式典にでられなかったのだって追放…」





言い終わる前にぎゅっとアルバに抱きしめられて。空いてる両手が行き場を失い宙を彷徨う。




「あぁ!! かわいそうにA!! 辛かったでしょう? 貴女の自慢の隊員が死んでしまって!! 権力を振りかざされ抗えない哀れな子。でも大丈夫、私が君を助けてあげるよ」






背中に回されていた手が、次は僕の頬を撫でる。






「さぁ、君もこちらにおいで。イスナーンにファーランにワヒード、君の知り合いだってたくさんいる」

「…」

「あ、2代目かい? その事なら君は心配しなくていいんだよ? 私が守ってあげるから、心臓の病だって私が必ず治してあげるよ」

「知ってたの?」

「君のことならなんでも知ってるさ!! あぁ、綺麗な髪だねA。キラキラ光って不思議な髪に金の瞳、整った顔。人形みたい。可愛い可愛い私のA、誰にも渡さない」







なんか、おかしな方向になってきた。
アルバってこんなに僕に執着心あったっけ?



僕の髪をするすると撫でるアルバから距離をとろうとするけれど、体制的にできなくて。






「でも良かった、君がソロモンと結婚しなくて。その点に関してはダビデに感謝してるんだ!! 君がソロモンのものになるなんて考えるだけでおかしくなるよ」

「怖いよアルバ…」

「そうやって私から離れるのかい? ソロモンに付き従うのかい? 」






視線を外せば、アルバの手に銀色に光る剣が見えた。








「なに、する気…?」

「ソロモンには絶対渡さないよ」




グサッ!!

僕の胸を剣が貫く。






「ぁ…、かはっ…!!」

「これから君の死体を大陸の裂け目に捨てようと思うんだ。あそこは広い。ソロモンですら見つけるのは困難だからね」







視界が掠れ、血の溢れる身体をアルバが横に抱いて歩きだす。








「あの傲慢なソロモンに渡しはしないさ」









薄れていく意識のなか。
僕は大陸の裂け目に捨てられた。

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