【マギ】神出鬼没なマギ4.〜アルマトラン編.後編〜

第183夜 優しい嘘 ページ36

あれから3日後。

神杖を片手に持ち、王宮を見上げる。


僕が追放されたと知ったら皆はどうなるんだろう。


黒ルフも少なくなって、心の傷も少しずつ癒えようとしてるんだから。


バレないように、皆が寝静まった今。
ここを出よう…。



ーピィピィー
(ダメだよ、行かないで)

ーピィピィ!!ー
(今Aがいなくなったら大変!!)



僕の側を忙しなく飛び回る白ルフ。





ごめんね、君達。

こんな僕を止めてくれて嬉しい。

行かないで、って繋ぎとめてくれようとしてくれて嬉しい。



ーピィピィ!!ー
(ここはAの居場所!!)

ーピィピィ!!ー
(Aがその手で作った居場所!!)

ーピィピィ!!ー
(権力なんかに負けないで!!)



そんな言葉を聞きながら夜空を見上げてみる。


見えるのは星の瞬きだけで、月は見えない。
あぁ、今日は新月なのか…。



「じゃあ、行こうかな…」



王宮に背を向けて。
アルマトランの果てに行こうと決心する。

だけど、果てに行っても終わらない。

アルマトランから追放ってことは、世界から消えなければ…。


「…」

あと数歩でレジスタンスの外へ出る…。
ここを出たら、もう。
戻って来ることはできな…、


「A様…?」

「え、」


後ろから掛けられた聞き慣れた声。


「シトラー?」


バレないように出ようとしたのに。
ここにさよならをしようと決心したはずなのに…。


振り向いて見えた君の不安そうな顔をみたら。
決心が鈍る、行きたくないと思ってしまう…!!


「どこに行くんですか?」

「ちょっとね」


駆け寄ってニコニコと笑うシトラー。


「寒いですよ? これ、着てくださいA様」


そう言って僕に着付けてくれたのは、7年の時を経てここに帰ってくるときに身につけていたフード付きのマントで。


「これ、シトラーにあげたやつ」

「A様が寒そうだったから」


荷物が神杖だけという少なさだけに不信がられない。


「すぐ帰って来ますよね!!」


どこまでも優しく。
僕のことを疑おうとしない君。


「うん…っ!!」


ごめん、ごめんねシトラー。
そんな君の心を利用して嘘をついた…!!


「じゃあ待ってますね!!」

「…」

「1番におかえりなさいって言いますから!!」



笑顔で手を振り去って行くシトラーに。



「ごめんね…」



深くフードをかぶり。
届かないであろう謝罪を口にして。




僕はレジスタンスの外へ戻れない一歩を踏み出した。





それは誰かを思うための嘘。
悲しくて残酷な、優しい嘘。

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