第179夜 繋ぎとめたいもの ページ32
繋ぎとめたいものって、以外と近くにあったりする。
この世界で、グヌードの中で死ぬという確率を生き残った皆と出逢えた。
一緒にバカやって、怒られて、戦って。
紡いできた時間で生まれた確かな絆が僕らにはある。
「ねぇ待って!! ファーラン、ワヒード、イスナーン!!」
ただでさえ大切な人を失った傷が癒えないのに、ソロモンへ会うことを許されなかった事で彼等の黒いルフがさらに鳴く。
ビィビィと、嘆きの声はシバに届くことは無かった。
「待って待って!!」
スタスタと歩いて去って行く3人を追いかけるが誰も足を止めてはくれない。
あー、しつこいって思われてるんだろうなぁ。
うるさいなとか絶対思われてるよ僕…。
でも、まだ皆と面と向かって話してない訳じゃん? 辛い過去を辛いまま生きている訳じゃん。
そんな重荷はさ、皆で分けて背負おうよ。
この世界の皆は優しいから、きっといいよって、そう言ってくれるはずだよ…。
僕の事を無視して行ってしまう中。
ピタッと止まってくれる者が1人だけ…。
「さっきからうるさいぞ、お前」
「やっぱり、イスナーンなら止まってくれると思った」
唯一、足を止め僕に振り向いてくれたのはイスナーン。
君がとても優しいことは知ってるから、だから僕の声が届いてると信じて追いかけた。
「なんだよ」
「えっと…。ほら、最近イスナーンと話してないなって」
光がほとんど宿ってない眼で射抜かれる。
言わなきゃ…!!
悲しいこともなんでも聞くよって。だからこちら側に戻っておいでって。
またこうして話せる保証なんてどこにもないんだから。
「イスナー…」
「おまえはどう思う」
ふと、いつもの優しい声色で呟く。
「何も残らなかったセッタを見たときは頭が真っ白になった。でも、その横であんな状態のライを見ちまったら、反対に残らなかった方がよかったんじゃないかって思ってよ」
神杖しか残らなかったセッタと黒こげで苦しんで死んでいったライ。
「僕は、最後にライと話せたよ? 助けてって言われて、何もできなかったけどね…」
フッと嘲笑する。
すると悲しそうに目を細めるイスナーン。
「苦しんでるのは、俺だけじゃないんだな…」
「そうだよ、イスナーンだけじゃないんだからさ。僕でよかったら話聞くよ? だから、こっちに戻ってきなよ…」
そのあと彼は踵を返して去ってしまったけど。
少しでも支えになれただろうか。
絆を繋ぎとめることができたのだろうか。
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千年彗星(プロフ) - 夢雪さん» 読んでいただきありがとうございます! そして泣いてくださるなんて…! アルマトラン編を好きと言ってもらえて嬉しいです、ありがとうございます! (2018年3月25日 20時) (レス) id: c15a2aa7e8 (このIDを非表示/違反報告)
夢雪 - 悲しすぎるです!(´;ω;`)ウッ…すごく泣きました。無意識に気づいたら泣いてました。アルマトラン編私好きです。 (2018年3月25日 16時) (レス) id: a2e26e90a4 (このIDを非表示/違反報告)
千年彗星(プロフ) - ティナさん» だいぶ落ち着いてきました(*^^*) 声をかけてくださり感謝感謝です!! それに加え何回も見てくださってるとは…!! ゴールデンウィークあたりにはできると思うのでそれまで待っていてくださると嬉しいです(*^^*) (2017年4月28日 12時) (レス) id: 5483d583eb (このIDを非表示/違反報告)
ティナ(プロフ) - お久しぶりです! 落ち着いてきましたか? 何回も繰り返し見てます! 更新楽しみにしてます! (2017年4月27日 21時) (レス) id: c9a6aed029 (このIDを非表示/違反報告)
千年彗星(プロフ) - マロンクリームさん» コメントありがとうございます!! だんだん落ち着いてきたので更新もそろそろできると思います! これからもよろしくお願いします(*^^*) (2017年4月23日 0時) (レス) id: 5483d583eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千年彗星 | 作成日時:2016年6月25日 22時