第165夜 匿名希望の傍観者 ページ18
騒がしかった昼間も、星と月が空を占拠すると嘘みたいに静かになる。
まるで、この世から生命が途絶えたみたいに。
「久しぶりだね、セバスチャン」
白い鱗が煌びやかに光るその姿。
なんの前触れもなく訪れた僕に微笑んでくれる優しい心の持ち主。
「レイメスから聞いたぞ。ダビデと戦い死にかけたと」
「うっ…。それは。ごめん」
彼は命を投げ売るような事をするとすごく怒る。
怒るっていっても、聖教連のおじいちゃん達みたいにガミガミじゃないんだよね。
少し強い口調で。でも何処か悲しさを含んだ、そんな叱り方。
「ごめんね、セバスチャン…」
真面に顔なんて見れなくて、視線を下にずらす。それでも、彼からの視線は痛いくらいに感じていて…。
「私はAに初めた会った時、守らなければと思った」
「…え?」
突拍子もなく始まったそれに、弾かれたように顔をあげる。
待ってましたと言わんばかりに彼の身体へと座らされる。
へへっ。
セバスチャンの体温が心地よくて眠たくなってきちゃうんだよね此処。この場所は僕だけの特等席だもんね〜!!
「私は。レイメスが死にそうな時、何もせず。ただ、生きる者の哀れさを見ているだけだった」
そう言いながら上を向いた。つられて僕も見るが、やはりそこは暗闇一色で。
それは夜のせいじゃなく。星と月の光すら届かない深い深い場所だからだ。
「そんな時、A。お前が私の前に現れたのだ」
そして懐かしむように。
大きく美しい瞳をゆっくりと閉じる。
「小さな身体に不釣り合いな神杖を手に持ち。ふらふらと危なっかしくやってきたお前に言われた」
「…」
「匿名希望の傍観者。と」
その記憶は鮮明に覚えている。
まさか君も覚えていてくれたなんて…。
そう。あの時僕は言った。
『君の一言で変わるかもしれない未来を捨てて傍観するだけ。でも、何もしなかった自分の存在が他に知れるのが怖く。なにより自分自身が怖くて目を逸らす』
『何を…』
『まるで匿名希望の傍観者だね!!』
うぅ〜ん。今後お世話になる君にそんなことを言って本当に申し訳ない…。
「私の心の奥を見透かされたようでびっくりしたよ」
「昔の僕がご迷惑をおかけしました…」
恥ずかしさと申し訳なさから、セバスチャンの身体に顔を埋める。
ぬくぬくする〜!!
「改めて思う。お前に出会えて幸せだと」
「えへへっ、僕もだよ!!」
いつ見ても。
優しく微笑むその姿は、何よりも美しい。
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千年彗星(プロフ) - 夢雪さん» 読んでいただきありがとうございます! そして泣いてくださるなんて…! アルマトラン編を好きと言ってもらえて嬉しいです、ありがとうございます! (2018年3月25日 20時) (レス) id: c15a2aa7e8 (このIDを非表示/違反報告)
夢雪 - 悲しすぎるです!(´;ω;`)ウッ…すごく泣きました。無意識に気づいたら泣いてました。アルマトラン編私好きです。 (2018年3月25日 16時) (レス) id: a2e26e90a4 (このIDを非表示/違反報告)
千年彗星(プロフ) - ティナさん» だいぶ落ち着いてきました(*^^*) 声をかけてくださり感謝感謝です!! それに加え何回も見てくださってるとは…!! ゴールデンウィークあたりにはできると思うのでそれまで待っていてくださると嬉しいです(*^^*) (2017年4月28日 12時) (レス) id: 5483d583eb (このIDを非表示/違反報告)
ティナ(プロフ) - お久しぶりです! 落ち着いてきましたか? 何回も繰り返し見てます! 更新楽しみにしてます! (2017年4月27日 21時) (レス) id: c9a6aed029 (このIDを非表示/違反報告)
千年彗星(プロフ) - マロンクリームさん» コメントありがとうございます!! だんだん落ち着いてきたので更新もそろそろできると思います! これからもよろしくお願いします(*^^*) (2017年4月23日 0時) (レス) id: 5483d583eb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千年彗星 | 作成日時:2016年6月25日 22時