【マギ】神出鬼没なマギ4.〜アルマトラン編.後編〜

第162夜 死なせない ページ15

僕には、生まれつき心臓の病があって。

いつくるか分からない発作のようなものだから、常に安静にしていろ。

そう医者から言われた幼い頃…。







「ん…」


お腹のあたりにのし掛かる重みに目を覚ます。
見える範囲の視界で見渡せば、そこは僕の自室で…。


「暗い…」


窓から差し込むのは淡い月の光のみ…。
そんな光を頼りに視線を下へずらせば、


「ソロモン…」


綺麗な青色の髪を持つソロモンが寝ていた。
僕にかけてある毛布にしがみ付くように手に力を入れていて…。


起こさないように身体を起こし、後ろにもたれかかる。



『ねぇ、ソロモン。何の本読んでるの?』

『お前には関係ねぇ』

『え〜、いいじゃん!! そんな分厚い本読んじゃってさ〜』



あの時、君が読んでいた本の事がすごく気になって。

なのに教えてくれないし、挙げ句の果てに隠しちゃうから見つけようがなくてさ…。


だから隙を狙って、君が夢中になってるところに飛び込んで行ったんだよ。


『やめろバカA!!』

『やだ!! 見せてよ気になるじゃん!!』


必死の攻防戦の末に、取り上げることに成功したんだっけ。


『んー? これ医者の先生が持ってるやつじゃん。こんなの読んでどうするの』

『これを勉強してんだよ今』

『なんでまた。医者になりたいの?』

『ちげーよ』

『意味分かんない』


医者になるわけでもないのに。あの時ソロモンは、薬の名前や病気に対する処置の仕方が書いてある本を勉強してて。

僕が戸惑う中、君は言ったんだ…。


『これを勉強したら、お前を助けられるだろ』


僕を見つめるその目は真剣で…。


『もう見てるだけは嫌なんだ。苦しんでるのに何もできないなんて嫌なんだよ!!』

『手を握ってくれてたじゃん』

『手を握っても助けられねーんだよ!! 目の前でお前が死んでいくのだけは絶対に嫌だ!!』


僕を死なせないために、生かすために勉強してる君の思いを聞いたあの時…。


「ふふっ、嬉しかったな〜」


なんて、1人で浸っていたら…。


「A!! 目が覚めたのか!!」

虚ろな視界に僕を映した瞬間、ガバッと起き上がるソロモン。

そして生きてることを確認するかのように震える手で僕の頬に片手を添える。


「…よかった」

「…」

「本当に、よかった…!!」

そのまま僕の方へ倒れ込んで来たから思ったら、安心したように脱力する。

「ありがとう、ソロモン」

「あぁ。お前は絶対に死なせない!!」





抱きしめられたその腕は、とても暖かい。

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