第131夜 信じる者達のために ページ33
夕暮れの医務室を訪れる。今回の事件を通し、あの本は沢山の者達に知れ渡った。
「あっ!A様!!」
「怪我の方は大丈夫?少し安静にしていれば復帰も早いと聞いたけど…」
魔道士狩りに怯えるシトラー達を安心させるのにだいぶ時間を費やしてしまったため、お見舞いにくるのが遅くなってしまった。
「もう大丈夫ですよ。今すぐにでも復帰できます!!」
握り拳をつくり笑ながらいう彼女に安心する。
近くにあるイスに座り窓から射す夕陽に目をやる。
もし、犯人が本の内容と同じように犯行したなら。また誰かやられ、不安が広がるだろう。
あの本は本命が襲われた時点で犯行終了になっているが、犯人に辿り着くところまでは書かれてない。
全く…。とんでもない物を世界に置いて死んでったものだよ。そして情けないな、僕。誰かがこうして痛い思いをしてからしか動けなかったなんて。
「ごめんね…」
「…え?」
「僕に責任感が足りなかった、守らなけらばならない立場になった自覚がなかったばかりに」
守りたいから守らなければいけない立場へとなった。後悔しそうとか言ってる暇があったら、何か行動するべきだったんだ!!
「ほんと、ごめ…」
「よかったです」
「…、え?」
顔を上げるとニコニコと微笑んでいて。
射し込んでくる茜色が、白一色のベッドを染めていく。
「貴女様が無事でよかったです」
「よかったって…」
「もし、貴女様が襲われていたら。私達はきっと、立ち止まることしかできなかったと思うんです」
頭を殴られて、血溜まりができるくらい悲惨で。駆けつけるのが遅くて。犯人に繋がる糸口もあまり無くて。悔しくて。情けなくて。
「1人で抱え込む必要なんて無いんですよ?廃人寸前の私達を救ってくれた。力になってくれた。だから今度は私達が力になりますよ!!」
両手を温かい手で包み込まれ握り締められる。
そしてその手を左胸に添える。
「私の心臓の音、分かりますか?」
「うん、分かるよ」
ドクン、ドクンと規則正しく繰り返すその音が手を通って伝わってくる。
「私は生きてます。襲われたとき、気配を感じて咄嗟に護身術を使いました」
「うん」
「貴女様に教えていただいたものです」
万が一の場合として教えてある事を思い出す。
そして僕の手を離すとその素振りを見せる。
「A様!!貴女様があの書きかけの物語を完結させることを信じてますよ!!」
「…うん、任せて!!」
乗り越えよう、どんなに辛くても。
信じる者達のために。
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千年彗星(プロフ) - 青鷺さん» コメントありがとうございます!! 小説共々、頑張っていくので今後ともよろしくお願いします(*^^*) (2016年6月28日 6時) (レス) id: 45d0ac0ce9 (このIDを非表示/違反報告)
千年彗星(プロフ) - マリーネさん» コメント感謝です(*^^*) 読者さまが楽しんでいただけたら幸いです! 今後ともよろしくお願いします!! (2016年6月28日 6時) (レス) id: 45d0ac0ce9 (このIDを非表示/違反報告)
青鷺(プロフ) - 千年彗星さん» 小説もだけど、受験頑張ってください!!!勉強?なにそれおいしいの? (2016年6月28日 6時) (レス) id: cb35208076 (このIDを非表示/違反報告)
マリーネ(プロフ) - むっか〜。シンドバッドむっか〜。 (2016年6月28日 4時) (レス) id: 252b10e98a (このIDを非表示/違反報告)
千年彗星(プロフ) - きゅーちゃんさん» 好きと言っていただきありがとうございます!! 今後ともこの小説をよろしくお願いします(*^^*) (2016年5月2日 17時) (レス) id: 113143dc1c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:千年彗星 | 作成日時:2015年8月1日 13時