【マギ】神出鬼没なマギ2.〜王の器になるべき者〜

第72夜 頬取れる3秒前 ページ23

「今日は助かったわ…。
何処かで見かけたらまた声をかけてね…」




あれからお婆ちゃんの家に荷物を届け、
お言葉に甘えてお風呂を借りた。

服も綺麗にしてくれて、感謝の念が尽きない。




「おばぁちゃんも助けて欲しかったら誰かに助けて貰うんだよ！！絶対だからねーー！！」



そう叫びながら手を振り、王宮へと走る。


あ〜。
思ったより時間がかかったな…。
この時間ならもう銀髪の手には金属器はないよな〜。



「銀髪め…」


何なの彼奴。馬鹿なの？馬鹿なのか!?
なんで人が肯定してるのに違うとか勘違いしちゃってんの!?



「あー。くそ！！くたばれ！！」

「誰がくたばるの？」

「僕の金属器取った奴…。
あぁ。ついでにユナンもくたばればいい」









…。









ん？あれ？
待て待て待て。今、僕誰と会話してた？
おおおおおお！！
これはあれか？
目には見えないあれ的なあれか？







そんな僕の考えを断ち切るように、


「本人の前でくたばれって…。
ふふ…。君って度胸だけは本当あるよね…」


足を止めた僕の頬を抓る手。



その手から徐々に力が入ってきて…。




ギュー！



ギューー！！



ギューーー！！！



「痛い痛い痛い痛い！！！！頬取れる！！」

「へぇ〜。取れるなんて僕見たことないよ。
長生きってしてみるもんだね…。ちょっと取ってみようか…」

「もげるーーー！！」

「ふふふ…」

「ごめんって！！ユナン！！！」


痛さに耐えられず、
僕の頬を抓っていた本人の名前を叫ぶ。



そんな僕の叫びを爽やかな笑顔で受け流す。



謝ったんだから手離してよ…。
しかも何？その笑顔。
めっちゃ眩しいんだけど！！



「全く…」

そう言って手を離してくれる。



見かけによらず凄い力だな…。
冗談抜きで取れる所だったわ〜。
頬取れる3秒前だったよ。うん。



「それで？」

頬を摩っていると突如かけられた声。


それでって？
え？何が？


「金属器。取られたの？」

「うん！！取られた！！」


ん？あれれー？
ユナンさんの笑顔が一瞬引きつったのは気の所為かな？



「『うん！！』じゃないでしょ…」

「痛いーーー！！本当に取れるーーーー！！」


今度は両の頬を抓るユナン。


「金属器は今何処に？」

「…おそらくシンドバッドさんの所」


そう言うと、ため息と共に解放される頬。





「じゃあ取り返しに行くよ」









僕の首根っこを掴み彼がそう言った。

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