第７７曲 ページ37
衣更くんと皆がいるであろう道場へ向かう
と、廊下の先で聞こえてきたのは氷鷹くん達の
会話だった。
その声に思わず衣更くんを見上げれば、困った
ように首を擦ると、見上げる私に苦笑を溢す。
『衣更くん……？』
氷鷹くん達の言葉に照れるように……
それでいて、どこか思い詰めたような……。
僅かに見せる影に、衣更くんが何かからこのま
ま押し潰されてしまいそうに見えて……衣更くん
が消えないように思わず声をかけると、衣更く
んはその声に私を見つめて静かに微笑んで…
ポンポンと軽く私の頭を撫でるとグリップを握
り直した。
「おーい……。本人いないところで、人の行く末を勝手に決めないでくれる？」
そして、頭上で一度深呼吸をする気配を感じる
と、車椅子を押して一歩踏み出す。
未だ私達の存在に気づかない氷鷹くん達へ口を
開いた。
「あっ、サリ〜に桜雪☆何で、いるの？」
「先ほど、携帯電話で呼び出した。合流するなら、早いほうが良いと思ってな」
「あぁ、丁度彩ノ瀬に会ったから一緒に来たんだ」
……気のせい……だったのかな？
氷鷹くん達と合流をして話す衣更くんの様子は
先程見た影は欠片も感じず、あんずちゃんとの
挨拶も穏やかな、普段と同じ様子で……
先程感じた違和感は気のせいだったのかもしれ
ないと感じた時だった…。
「うむ、頼りにしている」
「……あんまり、俺を信用すんなよ？」
『(あ……)』
無邪気に笑ってみせた衣更くんに一瞬見えた仮
面に思わず口を開きかける。
それでも、直ぐに無邪気に笑いながら衣更くん
に抱きつくスバルくんにそんな見えた仮面も再
び見えなくなった。
『あの……衣更くん……』
「ん？どうした？彩ノ瀬」
『ぁ………』
……ぐらぐらと……どこか不安定な衣更くんがこの
まま溜めて溜めて溜めて溜め込んで……
内側からひび割れて壊れてしまいそうな……
垣間見えた影を見逃してはいけない気がして、
口を開いたのに、何も言葉をかけることができ
なくて……
１人でいた私に衣更くんは手を差しのべてくれ
たのに、私は何も衣更くんに言うことが出来な
い…。
それが歯がゆくて、悔しくて…。
『ううん…。ありがとう、連れてきてくれて』
「……！」
それでも、今の私に出来ることは、衣更くんに
少しでも影が晴れるように笑うことしか出来な
かった。
衣更くんは笑った私に僅かに目を見開くと、柔
らかく微笑んで頷いた。
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朔櫻 実桜(プロフ) - *神*威*さん» まだ秘密ですが……恐らく"あの人"です(笑） (2017年10月29日 22時) (
レス) id: cb01b25ab1 (このIDを非表示/違反報告)
朔櫻 実桜(プロフ) - *神*威*さん» ありがとうございます！！面白いと言っていただけるとは恐縮です！どちらかというと男主を書くことが多いので女主の話を書くことは慣れないのですが…ドキドキすると言っていただけてとても嬉しいです！更新これからも頑張ります！ (2017年10月29日 22時) (レス) id: cb01b25ab1 (このIDを非表示/違反報告)
*神*威* - 視線の正体って、“あの人”ですよね？(笑) (2017年10月28日 23時) (レス) id: 662403215f (このIDを非表示/違反報告)
*神*威* - とても面白くて、読んでいてドキドキします！これからも更新頑張ってください(^○^) (2017年10月28日 23時) (レス) id: 662403215f (このIDを非表示/違反報告)
オワタ - 朔櫻 実桜さん» 楽しみにしてます 真緒くんへ、ならば小一時間話そうではないか(＾言＾) (2017年2月19日 18時) (レス) id: 8f905062d1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：朔櫻 実桜 | 作成日時：2016年6月29日 1時
