第７５曲 ページ35
＿＿「桜雪はここで待ってて！」
昼食と差し入れの試食を終えた後にふいにあん
ずちゃんが取り出した手紙。
内容が内容なだけに果たし状のようなそれの差
出人にいつぞやからお世話になっている鬼龍先
輩の名前が続いていたことに、私としては何の
心配も無かったのだけど……
万一に備えて外で待機するらしいスバル君達に
私はレッスンまで教室で待機するように仰せ付
けられ、こうして教室で１人待っているのだ。
『……はぁ……』
唯待つのも勿体ない気がして、佐賀美先生から
貰った当日のままほとんど進んでいなかったユ
ニット資料に目を通す。
思わず溢れたため息を呑み込んで、頁をめくっ
ても、全く文字が頭に入ることはなく、只々進
んでいく頁に手を止めた。
……まるで……蚊帳の外……
そこまで考えて慌てて頭を振り払う。
……あんなに与えられておいて……私はまだ何を求めようとしているんだろう……。
いつの間にか芽生えていた己の貪欲さに恥ずか
しくなった。
こうして、側に…一緒に居られるだけで…それだ
けで満足なのに…幸せなのに…
何故私は何に怯えてるんだろう……。
今はただ…一緒にいさせてもらえるだけ幸せなん
だから……余計な想いは持たないほうが良い…。
呑み込んだため息と共に奥底に貪欲な醜い想い
を沈めて頁に視線を落とす。
……余計なことをしなければ……余計な想いを抱かなければ……きっと……
「彩ノ瀬？」
ぼんやりとそんなことを考えていると、不意に
かけられた声に顔を上げて声の元を見れば、ど
こか驚いたように僅かに目を見開いた衣更くん
の姿があった。
『衣更くん……』
「何だよ、彩ノ瀬１人か？」
『あはは……皆は空手部のところに行ったよ』
「何だよそれ、あいつらまた面倒ごと起こしてんじゃないだろうな…」
それでも、直ぐにその顔に笑みを浮かべて教室
に入ると１人の私に首を傾げる。
それに苦笑しながらもスバル君達の居所を教え
ると、ぎょっとしたように冷や汗を流して困っ
たように首に手をあてた。
「んで？彩ノ瀬は教室で留守番か？」
『万一のことがあるかもしれないから〜て』
「全く…彩ノ瀬１人だけ置いて行って、あいつら…」
衣更くんが来たことに机の上に置いたユニット
資料を手に取って読みながら衣更くんが問いか
ける。
その言葉に笑みをつけたまま答えると、衣更く
んは呆れたようにため息を吐いた。
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朔櫻 実桜(プロフ) - *神*威*さん» まだ秘密ですが……恐らく"あの人"です(笑） (2017年10月29日 22時) (
レス) id: cb01b25ab1 (このIDを非表示/違反報告)
朔櫻 実桜(プロフ) - *神*威*さん» ありがとうございます！！面白いと言っていただけるとは恐縮です！どちらかというと男主を書くことが多いので女主の話を書くことは慣れないのですが…ドキドキすると言っていただけてとても嬉しいです！更新これからも頑張ります！ (2017年10月29日 22時) (レス) id: cb01b25ab1 (このIDを非表示/違反報告)
*神*威* - 視線の正体って、“あの人”ですよね？(笑) (2017年10月28日 23時) (レス) id: 662403215f (このIDを非表示/違反報告)
*神*威* - とても面白くて、読んでいてドキドキします！これからも更新頑張ってください(^○^) (2017年10月28日 23時) (レス) id: 662403215f (このIDを非表示/違反報告)
オワタ - 朔櫻 実桜さん» 楽しみにしてます 真緒くんへ、ならば小一時間話そうではないか(＾言＾) (2017年2月19日 18時) (レス) id: 8f905062d1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：朔櫻 実桜 | 作成日時：2016年6月29日 1時
