路地裏にて、── 一 ページ2
Aが太宰と中也と遊びに行くのは、多くて週に二、三回。少なくて二週間に一度。
そして最後に遊んだ日から、もう時期二週間が経とうとしていた。そんな時、Aは喫茶店で太宰に云った言葉を思い出す。
“ 君が私に飽きるまで遊んであげますよ”
「──飽きられたかな」
気がつくと終礼は終わっていて、A意外に教室に残っているのは何時もの様に教室で屯し始める集団と、掃除当番らしき二人組だけだった。
何故、毎度毎度二週間が経とうとする頃に思考がマイナス寄りになってしまうのか。
Aは頭を振って考えるのをやめた。
彼女は手早く荷物をまとめると、教室を後にした。
*
あー、やばいな。
Aは心の中で呟いた。誰かが彼女の後を付けて来るのだ。
試しに携帯をいじるフリをして立ち止まると、相手も立ち止まる。「尾行下手かよ」と内心で罵りながら、如何しようかと考える。
まず大前提として、此の儘家に帰る事は出来ない。
不審者に家を知られたくないのだ。Aは偶に遊ぶ太宰達にすら『相手が裏社会に属している』と云う理由で送迎の申し出を断っているのだから、何処の馬の骨とも知れない不審者相手に家の場所を教える心算は毛頭無い。
そして次に──これはあくまでAの感覚だが、相手は随分と余裕を持っている。
足音を顰める事もせず、堂々と革靴の底をコンクリートにぶつけてコツコツと足音を立てて後をつけて来る。まるで「気づかれても構わない。気づかれた所で、何の問題も無い」と云われている様な余裕を感じるのだ。
素人ですら尾行相手には気づかれない様に警戒して歩くでしょ。……厄介な相手に尾行されたなぁ。
Aは何も無い前方を睨みつけると、再び歩き出した。
目的地は、勿論家では無い。
*
Aの通学路は、人通りがあまり多くはない。だが、そんな通学路よりもさらに人通りの少ない場所に彼女は到着した。
其処は、薄暗い路地裏だった。
Aは路地裏を暫く歩いてから立ち止まった。勿論、後ろについてきた相手も立ち止まる。
はぁ、と大きな溜息を吐きながら、彼女は振り返った。
「私に何かご用ですか?」
Aの視線の先には、黒い背広に、黒帽子を身に纏った見目麗しい男がいた。
「後を付けられていると気付いたのなら、路地裏は避けるべきだったな」
そう云って男は、其の綺麗な顔に笑みを浮かべた。
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黒猫 - pixivの方でコメントできないのでこちらでさせていただきます。相変わらず面白かったです!他の小説も読ませていただきました。ポケモンの「顔面600族は見慣れてるから」で「スゲェ」ってなりました。私は何回見ても慣れる気がしません…。次の更新、楽しみにしてます! (9月3日 16時) (レス) id: 4dfbfc9ed5 (このIDを非表示/違反報告)
霧(プロフ) - 息抜きさん» 返信ありがとうございます!読みづらいことは無いです!普段pixivで読んでいるので、名前変更は出来ても出来なくてもそんな気にしてないので!ただ仕様なのかどうなのか気になっただけです!返信ありがとうございました!これからも楽しみにしています! (6月4日 18時) (レス) @page16 id: 199d1c4ec1 (このIDを非表示/違反報告)
息抜き(プロフ) - 霧さん» コメントありがとうございます! くるっぷには占いツクールの様に、名前表記を変更する事が出来ないんです😭 読みづらくて本当に申し訳ないです…… (6月3日 22時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)
霧(プロフ) - コメント失礼します!いつもワクワクしながらこの小説を読ませていただいております!主にpixivで読んでいるのですが、くるっぷというサイトでも小説読みました!質問なんですが、あの(名前)は変更できるのでしょうか?それともそういう仕様なのでしょうか? (6月2日 22時) (レス) @page17 id: 199d1c4ec1 (このIDを非表示/違反報告)
息抜き(プロフ) - ほしくずさん» お待たせして申し訳ありません。昨晩から色々と方法を試してみたのですが、いまいち進展がなかったので、くるっぷというサイトも使用してみる事にしました。わざわざアプリを入れる手間をかけて頂いたのに、解決策を見つけられず申し訳ないです……。 (5月25日 13時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:息抜き | 作成日時:2022年12月28日 22時