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少し前 ページ10

「お前の好きにはさせねえ。絶対に」
 低い声が辺りに響く。
 ヴェルレエヌの中也に対する「お前の心に関わる人間を、全員暗殺する」と云う言葉に対して、中也が返した言葉だった。
「それでいい。お前にも選び、悩み、思い知る時間が必要だろうからな。だが結局は、俺の云うとおりに行動する。その証拠を今から見せてやる」
 何処か慈しみを携えた表情と声でそう云うと、ヴェルレエヌは中也の額を優しく覆う。
 
 其の少し前。何処か遠くの方でチャイムらしきものが聞こえた。其れを聞いてヴェルレエヌは「あぁ」と思い出したかのように口にする。
「もう直ぐ『彼女』の下校時間だ。そうだろう?」
「──おい、まて、」
 
 其処から異変を感じ取るのは、一瞬の事だった。

 其処に現れたのは、黒い炎だった。
 その後、黒い炎にも変化が見える。中也を中心に、周りの凡ゆるものが吸い込まれるようにして消えていく。
 ほんの一瞬の出来事だったが、其処に在ったのは間違いなく暗黒孔だった。



 「無様だね、中也」
 地獄の様な風景の中心で、中也が苦しんでいた。
 そんな彼に、話しかける人影が一つ。
「手、前……」
「潔く死ぬこともできないのかい?」
 そう云って少年は中也を担ぐ。少年によって強制的に異能を無効化された中也は、ゆっくりと瞼を閉じていく。
 其の直前、中也は悔しげに、己が嫌って仕方がない相手の名前を呼ぶのだった。

 次に中也が目を覚ました時、既に太宰の姿はなかったが、その代わりに咽せ返る程の血の匂いが漂ってくる。
 ビリヤード・バー、“旧世界”。
 中也はふらつく足取りで店へと入り、時折転びながらも必死で店の奥へと進んだ。

 其処で中也が見たものは、彼の仲間──『旗会』のメンバー達の死体だった。



 後日、色々あり仲間の葬儀中に抜け出した中也と、彼が少し苛々としている現状を作り出した元凶で在るアダムはヴェルレエヌについての情報をまとめ、次にヴェルレエヌに狙わられる相手を予測して工場に訪れることに決めた。

 「そうだ、工場に行くまで少し時間があるから、寄り道しても構わねえか?」
「構いません。何方まで?」
「知り合いがいる高校」
 其れでアダムは理解した。

 「成程、先日ヴェルレエヌが云っていた『彼女』の事ですね。ですが当機の予想によると、『彼女』が生きている確率は極めて低いかと」
 遠回しに『時間の無駄だ』と告げる機械に、中也は無愛想に「うるせえ」と返すのだった。

少しの安堵→←帰宅



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黒猫 - pixivの方でコメントできないのでこちらでさせていただきます。相変わらず面白かったです!他の小説も読ませていただきました。ポケモンの「顔面600族は見慣れてるから」で「スゲェ」ってなりました。私は何回見ても慣れる気がしません…。次の更新、楽しみにしてます! (9月3日 16時) (レス) id: 4dfbfc9ed5 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 息抜きさん» 返信ありがとうございます!読みづらいことは無いです!普段pixivで読んでいるので、名前変更は出来ても出来なくてもそんな気にしてないので!ただ仕様なのかどうなのか気になっただけです!返信ありがとうございました!これからも楽しみにしています! (6月4日 18時) (レス) @page16 id: 199d1c4ec1 (このIDを非表示/違反報告)
息抜き(プロフ) - 霧さん» コメントありがとうございます! くるっぷには占いツクールの様に、名前表記を変更する事が出来ないんです😭 読みづらくて本当に申し訳ないです…… (6月3日 22時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - コメント失礼します!いつもワクワクしながらこの小説を読ませていただいております!主にpixivで読んでいるのですが、くるっぷというサイトでも小説読みました!質問なんですが、あの(名前)は変更できるのでしょうか?それともそういう仕様なのでしょうか? (6月2日 22時) (レス) @page17 id: 199d1c4ec1 (このIDを非表示/違反報告)
息抜き(プロフ) - ほしくずさん» お待たせして申し訳ありません。昨晩から色々と方法を試してみたのですが、いまいち進展がなかったので、くるっぷというサイトも使用してみる事にしました。わざわざアプリを入れる手間をかけて頂いたのに、解決策を見つけられず申し訳ないです……。 (5月25日 13時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:息抜き | 作成日時:2022年12月28日 22時

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