〇April 5 ページ9
『今年はとても良い気候の影響で、桜は例年以上に咲いておりーーー』
・
今朝のニュースで言っていた通り、今年の桜はそれはそれは見事な咲きっぷりだった。
「ほんとに綺麗だな……」
「ね、素敵」
上を見ればどこまでも広がる桃色。その隙間から覗く真っ青な空。時々見える太陽が眩しい。桜のアーチとはまさにこのことだ、と思った。
「腹減ったなぁ」
「もう?」
「育ち盛りなんだよ、きっと!」
食い意地の張ってるエレンはいつだってお腹が空いているようだった。そんなエレンだから私は。
「お弁当、作ったんだけど」
「食べる!」
「場所探そっか」
私たちは公園を歩き回り、レジャーシートを広げられそうな場所を探した。しかし、今年は桜の咲き方がよく、人も多い。
「場所、ないねぇ」
「うーん……あ、あそこ!」
エレンが指したのは、ちょうど帰ろうとしている家族だった。ラッキー。やっぱり私たちツイてるね、なんて笑って。
「はやく食べたいなぁ」
「ちょっと待ってね」
そんなに期待されるのもプレッシャーなんだけど、なんて思いながらお弁当を開ける。
「おお、うまそ!いただきます!」
「はい、どうぞ」
昔お母さんから教えてもらった卵焼き。なかなか綺麗に巻けなくて泣いたこともあったっけ。今では綺麗に巻けるようになったよ、お母さん。
「どう、かな」
「めちゃくちゃうまい!」
「ほんと?よかった」
好きな人にいつか作ってあげてね、とお母さんに言われたことを思い出した。大好きな人に喜んでもらえて本当によかった。
「Aはいい嫁になれるよ」
「そうかな。ありがとう」
「嫁の貰い手があればな」
「ひどーい」
「なければ俺がもらってやるよ」
「その時はお願いします」
・
19人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:nana. | 作成日時:2019年1月8日 21時