無 1 ページ41
織田作side
其の少女との出会いは余り良い物では無かった。
龍頭抗争の真っ只中だった。
各地で爆発や破裂音、銃撃音等が鳴っていて、
俺自身も銃を構えて物陰に隠れていた。
その時、何処かから赤ん坊の泣き声が聞こえて来た。
それを辿る様に走って行けば、赤ん坊の泣き声に混じり、もう一人、子守唄の様な物を歌う女声が聞こえてきた。
【貴女に愛をあげましょう
貴女に気持ちをあげましょう
貴女に全てをあげましょう】
澄んだ声は赤ん坊をあやす様に。
【私の歪んだ愛を
私の歪んだ気持ちを
私の歪んだ全てを】
哀しい歌声で。
【私が貰えなかった
受け取れなかった全てを
貴女にあげましょう】
辿り着いた時、其の少女は自らの腕の中に居た赤ん坊に車の硝子片を突き刺そうと大きく振りかぶっていた。
織「止めろ!!」
俺の声にゆっくりと此方に目を向ける少女。
驚いた事に俺の手に握られている拳銃を見ても全く怯む様子も見せず、何なら立ち上がって此方に近付いて来た。
貴「…この子を殺して下さい。」
そう静かに告げて、赤ん坊を手渡してきた。
織「…出来ない。
こんな中よく生き延びた奴だ。」
辺りから聞こえる銃声に一瞬目を向け、少女は言った。
貴「…だからこそ殺さなければならない」
力強く。
この子を生かした所でこの後も生きていられるか否かなんて、もう結論は出てる事。
貴「生きられない。」
一時的な希望なんかを与えるよりも殺してあげた方が余程良い。
そう言って少女は跪き、銃口に自らの額を当てた。
まるで、其の赤ん坊と私は同価値、その子を殺さなくとも、私は殺して、と言う様に。
織「…何をしてるんだ」
そこで銃声が此方に迫って来た事に気付き、そのまま動かない少女を無理矢理担いだ。
織「…っ確り掴まっててくれ!」
…そんな言葉に少女が従うとは思えなかったが。
その予想通り少女は俺の事を一度も掴む事をせず、
お陰で何度も落としそうになった。
その後、龍頭抗争の最中に拾った他の子供達も含めて咖喱屋の店主に託す事にした。
少しもすれば子供達は年相応にはしゃぐ様になり、
良かった、と安堵する一方で、彼の少女は
何時も何をする訳でも無く、何処か遠い所を見つめて端の方に座っていた。
そう言えば、と少女を見ていて思い起こす。
彼女の名前を未だ聞いていなかった。
織「…お前、名前は何て言うんだ?」
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花コム( ゚Д゚) - 柏村葬さん:へぇ!そ、そうだったんですね…漫画持ってないので知りませんでした…申し訳無いです… (2019年3月5日 8時) (レス) id: bbf7a999fb (このIDを非表示/違反報告)
柏村葬(プロフ) - 狂16ですが、漫画が原作なので漫画を先にした方が良いと思います。漫画とアニメでは全然違いますから。 (2019年2月25日 0時) (レス) id: 67a0056d03 (このIDを非表示/違反報告)
桜匁 - 作品、拝見しましたー! 文章にから場面の様子がしっかりと分かり、素敵な小説だと思います! ヤンデレ中也さん…ですか… なんかいいですね!!← これからもお体に気をつけて更新頑張ってくださいね。応援しています!(*≧∀≦*) (2018年12月8日 20時) (レス) id: 58c26fa576 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:花コム( ゚Д゚) | 作成日時:2018年9月10日 12時